農水省オウムソング事件
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農水省オウムソング事件は、1997年3月に起きたインターネット事件。国内初のサイバーテロとする向きもあるが、政府公式見解ではない(サイバーテロ評議会)。農林水産省のWeb掲示板に、オウム真理教の作曲と思われる曲が流れるよう細工が行われた。
[編集] 概要
97年3月当時、農林水産省(以下農水省とする)とオウム真理教の間に摩擦が起きていた。これにより農水省のWeb内掲示板では賛否両論の意見争いが起きていたが、そんな中突如として、掲示板を閲覧するとオウムソングが流れ出すという事態になり、マスコミ、警察等を巻き込んで事件へと発展した。
[編集] 経緯
事件前、意見闘争の真っ只中であった農水省掲示板は、当時アンダーグラウンド系であった大手掲示板のあやしいわーるどに紹介されている。これにより、あやしいわーるどから悪戯者が農水省掲示板へと流れ、騒ぎを大きくする原因となった。
その中には、この事件の真犯人と言われるアリス・リデルも含まれた。アリスは農水省掲示板のセキュリティが高くない事に着目しembedというhtmlタグを用いてaumhymn.midというMIDIファイルへのリンクを行ったという。結果として閲覧者のPCからはオウムソングが流れ出す事となったが、この手法自体はhtmlの少々の知識で簡単に行えてしまうものであり、ハッキング等ではない。
aumhymn.midは地下鉄サリン事件当時に、教団とは無関係の第三者によって作られたもので、曲こそオウム真理教のものであったが、アレンジなどを見てもまったく教団とは関係のないものである。
本来なら「誰かのイタズラ」で終わってしまう程度の話だが、新聞、テレビなどのマスコミが取り上げた事で事件化した。当時のマスコミはインターネット関連の技術に詳しくなく、ホームページから怪しい音楽が流れた事だけが注目され、かつオウム関係ニュースに新たな展開が欲しかった事も関係し、農水省Webがハッキングされたとして報じてしまったのである。
これにより本件は警察の関与する事件となったが、捜査の末行われたのは、オウム真理教信者宅への家宅捜索であった。この事について、後にオウム真理教信者である事が発覚した河上イチローは自著、「サイバースペースからの挑戦状」の中で「警察は真犯人を知りつつ、教団への捜査介入の口実として使った」と非難したが、当時の警察がネット犯罪捜査に明るくなかっただけである、との見方もあり真相は不明であるが、事件的に本件は、オウム真理教関係者の犯行として決着してる。
尚、本件がサイバーテロであるという触れ込みは、サイバーテロ対策協議会(警視庁)の前身であり経済産業省内に設置されていた調査会の資料に、他数件の事件と共に掲載されていた事が発端である。この資料は平成13年の協議会設立とともに削除されたため現存していないし、サイバーテロ対策協議会では、現在までのいずれの事件も公式にはサイバーテロと認めていない。