近親婚
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近親婚(きんしんこん)は、近い血縁関係にある者同士が婚姻関係を結ぶこと。またはそのような婚姻である。婚姻を伴わない近親相姦との相違に注意。
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[編集] 近親婚の歴史
[編集] 近親婚の禁止
中国・朝鮮においては古来より同姓不婚の原則があり、父系の近親者間での婚姻はなされなかった。ただし異姓の近親者間(男性と、姪や母方のオバとの間など)での婚姻は禁止されておらず、「同姓不婚」をただちに「近親婚の禁止」と解することはできないとの指摘もある。
カトリックでは、近親婚を禁止していた。しかし、ヨーロッパの王族、貴族は同ランクの者との婚姻を繰り返したため、近親婚を避けることは事実上不可能になり、気付かなかったことにしたり教会に特別免除をもらうことによって、有名無実なものとなった。ただし、離婚(婚姻の無効)する時や他人の結婚に異議を申し立てる時には、近親婚であることが理由として利用された。
[編集] 近親婚の容認・推奨
世界各国の神話の天地創造では神々や創造直後の人間について近親婚をおこない神や人口を増やす描写があることが多い。
古代エジプトなどにおいては、近親婚が容認されたり、むしろ奨励されたりしていたケースもある。権力者が長い世代にまたがって同じ一族による主権を維持すると、血統の純潔性を保とうとする意味から近親婚が多くなる。
ヨーロッパの多くの国では王族の結婚による領地拡大政策を行った結果として近親婚が増え、遺伝性の病気が王族の一部に見られることもある。
日本においても、奈良時代以前、すなわち古事記・日本書紀には王族において異母兄弟姉妹間の結婚が数多く記載されている。しかし、これらの関係は、系譜の造作の結果(無理やり父系的な系譜に作り変えられた)とも考えられ、慎重な検討が必要である。ただし、オジ・メイ婚やオバ・オイ婚(兄弟姉妹のレベルが異母あるいは異父の場合に限る)は、従兄弟姉妹婚と同様、血の純潔さを尊重する立場から好んで行われたことは確かなものと考えられる。古代の大王家と蘇我氏、及び平安時代以降に続けられた皇室と藤原氏との婚姻も、同姓間ならぬ近親婚の累積である。
かつて、農業後継者の確保等の要請から親族間の結婚が少なからず行われていたことは公知の事実であり、地域的特性から親族間の結婚が比較的多く行われるとともに、おじと姪との間の内縁も散見されたというのであって、そのような関係が地域社会や親族内において抵抗感なく受け容れられている例も存在した [1]。
[編集] 現代の規定
現代においては、近親婚は多くの国や地域で禁止されている。
[編集] 日本
日本でも近親婚は禁止されている。正確には、近親者間の婚姻に係る婚姻届は受理されないし、誤って受理されても後に取り消し得る。
日本における禁止される近親婚は以下の通り。
- 直系血族
- 三親等内の傍系血族(養子と養方の傍系血族を除く)
- 直系姻族(婚姻関係終了後も継続)
この他にも特別養子と実方との親族関係が終了した場合にも、婚姻における近親婚制限が適用される。
婚姻後の認知によって、近親婚状態が生ずる場合がある。この場合は婚姻取り消しの対象になる。
しかし、近親者間の性交自体は法律上禁止されておらず、また近親者間の事実婚認定も阻害されない。
[編集] 近親婚禁止の理由
近親者間で婚姻が禁止されるのは、社会倫理的配慮及び優生学的配慮という公益的要請を理由とする。近親者間における内縁関係は、一般的に反倫理性、反公益性の大きい関係というべきである。殊に、直系血族間、二親等の傍系血族間の内縁関係は、現在の婚姻法秩序又は社会通念を前提とする限り、反倫理性、反公益性が極めて大きいと考えられる[2]。
[編集] 生物学的理由
- 近親者同士が性行為をした場合、その血族特有の症状を持つ子孫が誕生する確率が上がるため。
[編集] 社会学的禁忌
- 自身の近親者が、同じ血縁者と結ばれると言うことに対する心理的不快感。