進化分類学
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進化分類学(しんかぶんるいがく)は分類学における1つの立場であり、生物を系統関係(進化の道筋)と全体的な類似との両方に基づいて分類する考え方である。
伝統的な系統学では生物を全体的な類似に基づいて分類している。これは、原始的な進化段階にある生物に共通の形質=共有原始形質を持つ一群(系統樹で表現すれば、系統樹の枝の根元のあたりの塊)をまとめて1つのタクソン(側系統群Paraphyletic group)とし、そこから出た共有派生形質を持つ(ひときわ抜きん出た)一群をまた別のタクソン(単系統群Monophyletic group)とする行き方である。
よく知られた例として、爬虫類と鳥類(爬虫類の中の1つの系統群である)の分類がある。進化分類学は系統樹における枝分かれのパターンを考慮する(全く別の枝を1つにまとめることはしない)一方で、以上のような伝統的な分け方も認めている。従って側系統群をタクソンとして容認する。
しかし分岐分類学の立場からは、以上のような方法は派生形質を恣意的に選ぶことになり、進化に関する「単純なものから複雑なものへ進歩する」という古典的誤解も助長しかねない、と批判される。
進化分類学の用語法で言えば、「側系統群はすべて、ある共通祖先の子孫だという意味で単系統群でもあるが、ただ完系統群(Holophyletic group:これは分岐分類学の用語法でいう単系統群)ではない」ということになる。
なお日本語では、進化分類学的な考え方を系統分類学と呼ぶことも多いが、分岐分類学のことを系統分類学(Phylogenetic taxonomy)ともいうので注意。