金霊
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金霊(かねだま)は、日本に伝わる妖怪。「かなだま」とも呼ばれ、漢字では「金玉」とも表記される。
厳密には金霊と金玉は似て非なるものだが、訪れた家を栄えさせるという共通点があり、金玉が金霊の名で伝承されていることもある。ここでは金霊、金玉の両方について述べる。
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[編集] 金霊
その名の通り金の精霊、または金の気とされる。金霊が人家に訪れると、その家は栄え、金霊が去って行くと家も滅び去ってしまう。
鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』によれば、善行に努める家に金霊が現れ、土蔵が大判小判であふれる様子が描かれている。ただしこれは実際の伝承を綴ったものではなく、善業者には必ず福が訪れるということを象徴したものとされている。
後述の出典元にある書籍類の著者・水木しげるは、自身も幼い頃に実際に金霊を目にしたと語っており、それによれば金霊の姿は、空を飛ぶ十円硬貨のような姿だったという。
[編集] 金玉
その名の通り玉のような物で、これを手にした者の家は栄えるという。
東京都では轟音と共に家へ落ちてくるといい、千葉県では黄色い光の玉となって飛んで来ると伝えられている。
静岡県では、夜道を歩いていると赤い光の玉となって足元に転がって来るといい、家へ持ち帰って床の間に置くと、一代で大金持ちになれるという。ただし金玉はそのままの姿で保存しなければならず、加工したり傷つけたりすると、家は滅びてしまう。
江戸時代の奇談・怪談集である『兎園小説』では、文政八年(1825年)の房州(千葉)での逸話が語られている。それによれば、丈助という農民が早朝から農作業に取り掛かろうとしていたところ、雷鳴のような音と共に光り輝く卵のようなものが落ちて来た。丈助はそれを家を持ち帰り、秘蔵の宝としたという。この『兎園小説』では「金玉」ではなく「金霊」の名が用いられているため、金霊を語る際にこの房州での逸話が引き合いに出されることがあるが、実際には金霊ではなく金玉の方を語った話であるらしい。
[編集] 関連項目
[編集] 出典元
- 水木しげる 『図説 日本妖怪大全』 講談社、1994年、153頁。
- 村上健司 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、112頁-113頁。
- 水木しげる 『妖鬼化 1 関東・北海道・沖縄編』 Softgarage、2004年、34頁。