錯視
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錯視(さくし)とは、視覚に関する錯覚のことである。俗に「目の錯覚」ともよばれる。生理的錯覚に属するもの、特に幾何学的錯視については多くの種類が知られている。だまし絵とはことなる原理による。
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[編集] 主な幾何学的錯視
[編集] ミュラー・リヤー錯視
最もポピュラーな錯視の一つ。上のふたつの図形の中心の線分の長さは異なって見えるが同じ長さである。このような錯視を、サイズの錯視と言う。
[編集] ツェルナー錯視
非常に有名な錯視の一つ。図にある4つの線分は全て平行である。羽の角度が鈍角であるほど、錯視は顕著になる。
[編集] ヘリング錯視
上の2本の平行線は、斜線の影響を受けてゆがんで見える。このような錯視を、湾曲錯視とも言う。湾曲の錯視では他にオルビゾン錯視、ヴント錯視などが該当する。
[編集] ポンゾ錯視
二つに交わる線分の間に平行線を入れると、上の平行線が長く見える。錯視の発生は決して強くないが、一般によく知られる錯視の一つ。また、同氏の錯視にはポンゾの円筒がある。
[編集] フィック錯視
上の図形「A」と「B」は合同であるが、図形Bの方が長く見え、また、図形Aの方が太く見える。非常に有名な錯視の一つ。
[編集] ポッゲンドルフ錯視
斜線を描き、その間の形跡を別の図形で隠すと、その直線の始まりと終わりがずれて見える錯視で、よく知られる錯視である。図ではAとつながっているのは、一見それらしく見えるBではなく、Cが正しい。なお、この錯視はミュラーリヤーが投稿した論文の中から審査員であったポッゲンドルフが発見したものであり、彼はミュラーにこの発見も付け加えるように依頼したが、ミュラーが気を利かせ、事実上の発見者であるポッゲンドルフの名前を冠して論文発表した。
[編集] ジャストロー図形
ジャストロー錯視ともいう。上の図形で、二つの扇形は同形だが、内側、即ち下の扇形の方が大きく見える。また、その応用で台形を上下に並べると必然的に上の台形が大きく見える。
[編集] デルブーフ錯視
デルブフ錯視とも。二つ合同な円を描き、片方には外に大きな同心円、もう片方には外に小さな同心円を描くと元の円の大きさが異なって見える錯視。大きさが極端なほど錯視も顕著になる。応用として図形の中から別の図形をくりぬくと、くりぬいた部分が大きく見える。
[編集] オッペル・クント錯視
まずは等間隔に三本の平行線を引き、それぞれA、B、Cとする。AとBの間には何本もの平行線を引き、BとCの間には何も引かない。すると、AとBの間隔の方が広く見える。図の線分ABと線分BCの距離は同じである。
[編集] フレイザー図形
フレイザー錯視、またはフレーザー錯視ともいう。イギリスの心理学者フレイザーが1908年に発表したこのパターンは、角度・方向錯視を起こす図形であり、錯視の王様とも呼ばれている。渦巻き状の図形を指でなぞってみると、実際は同心円であることが分かる。フレイザー錯視の原理は限りなく直線に近い鋭角を並べると角度が傾いて見えることであり、直線を並べただけでもこの錯視は発生する。
[編集] ミュンスターバーグ錯視・カフェウォール錯視
平行線の両側に等間隔に同じ色の正方形を描く(上下互い違いになるようにする)。すると平行なはずの線分が歪んで見える。カフェウォール錯視はその線分が灰色になったもので、より屈折度が高まる。
[編集] その他の幾何学的錯視
- ヴント錯視
ヘリング錯視の逆に当たる。今度は平行線が反り返って見える。
- オルビゾン錯視
ヘリング錯視と同じ原理で、同心円の上に描かれた正方形がゆがんで見える。
- ザンダー錯視
同じ長さの対角線が描く平行四辺形の形によって、別の長さに見える(鈍角の方が長く見える)錯視。
- ボールドウィン錯視
同じ長さの平行な線分を描き、片方の始点と終点には大きな図形を、もう片方には小さな図形を描くと、線分が異なった長さに見える錯視。
- ジャッド錯視
二等分線の両端に片方は外向けに、もう片方は内向けに矢状の羽を付けると、等分されたはずの線分の長さが異なって見える。羽の角度が鋭いほど錯視は顕著になる。ミュラーリヤー錯視の一種といわれる。
- ヘフラーの図形
放射状の線の上に線分を引くと、曲がって見える錯視。任意に交差させた線分だとなお、効果的である。
- 盛永の錯視
垂直な線を描き、それに接する鋭角を左右対称に描く。垂直線を消せば、互いの鋭角の接点が垂直でなく見える。
- 小保内の角度錯視
垂直線の先端が斜線が延長線上で交わるように線分を引いた場合、斜線が実際の交点より内側に見える。ポッゲンドルフ錯視の一種。
- 内藤の重力レンズ錯視
平行四辺形の交点4箇所にドットを打ち、その周辺に任意の円を描く(接してはいけない)。すると平行四辺形がいびつな四角形に見える。1991年に内藤率いるNTTの研究グループが発表した。
- レニー錯視
斜めの線に接するように45度角を描く。同じ角度なのに、上下で角度が異なって見える。
- ヘフラーの湾曲図形
二本の湾曲した線分(角度は同じ)を描き、これを異なる大きさの湾曲線分で囲むと異なった形に見えるというもの。
- エビングハウス錯視
同じ大きさの図形でも大きい物の周りに置かれると小さく、小さい物の周りに置かれると大きく見える錯視。円形、球体が最も効果が現れる。また、エビングハウスは他の錯視も発表しているため、エビングハウスの大きさ錯視ともいう。
- エーレンシュタイン図形
田の図形で十字に交わる線分の交点部分を消すと、その周りに円形が浮かび上がる錯視。
- リップスの方向錯視
平行な三本線を引き、外側の二つの直線の両端に屈折した平行線を描く。すると三本線の真ん中が平行じゃない線分に見えてしまう。
- リップスの湾曲錯視
大きさの異なる円を水平線上に並べる。真ん中を大きく、端を小さく揃えると、水平線が弧を描いているように見える錯視。
- シエリーの錯視
等間隔の短い平行線と長い平行線では、短い方が幅が広く見える錯視。
- ザンフォリン錯視
円形を二つ描き、その円の間と円の直径を等しくする。すると、両円の間の方が広く見える。
- ウェイト・マッサロの錯視
ミュラー・リヤー錯視の応用。合同な長方形に矢羽を付けた場合、内向の図形の方が縦の幅が広く見える。
- ヘルムホルツの正方形
合同の正方形を二つ描き、片方を縦縞、片方を横縞にして四辺を消してしまうと、縦縞は横長に横縞は縦長に見えてしまう錯覚。
- プルドン錯視
鋭角の鋭い三角形二つを一直線上に斜めに並べると折れ曲がって見える錯視。
- ジョバネッリの錯視
合同な二つの図形を並列させる。その中心にドットを打つ。すると双方の点の位置が中心から外に逸れて見える。
- ギラム錯視
水平な直線を台形で遮り、間の軌跡を消すと、水平線がずれて見える錯視。ポッゲンドルフ錯視に類似している。
- フィー錯視
- デイの正弦錯視
平行線で正弦を描くと、弧の部分が短く見える。
- バーゲン錯視
白い対角線と黒い図形で囲まれた格子戸の交点上に無数の黒点のスプライトが見える錯視。
- カニッツァの三角形
描いてないはずの三角形が浮かび上がる錯視。形の残像を利用したもの。
- エイムスの窓
動きのある錯視。円筒の中を左右往復する平行四辺形が、回転する長方形にも見える錯視。
- メッツガーの図形
円を描き、両端を残して後ははみ出るように別の図形で隠すと円が楕円形に見える。図形は縞模様の長方形だと度合いが顕著になる。
- ネッカーの立方体
線分だけの立方体で、全ての辺を描くと、二種類の図形に見える錯視。
- シュレーダーの階段
描いた階段が逆さの向きにも見える錯視。応用したものとしてクレーター錯視がある。
- クレーターの錯視
凸面の図形は凹面にも見えるという錯視。月面のクレーターが隆起した地形にも見えることから名付けられた。
- シェパードの錯視
二つの平行四辺形の片方を斜めに傾け、離して置くと異なった図形に見える錯視。
- 市松模様の錯視
市松模様が左、上に歪んで見える錯視。
- ポップル錯視
平行に並べた図形の模様を均等に上下にずらすと、図形が傾いて見える錯視。ツェルナー錯視のように並べると顕著になる。なお、パソコンの活字体でもこの傾向が見られ、「杏マナー」とパソコンで入力すると、文字が右下がりになっていることが2ちゃんねるで採り上げられ、後にトリビアの泉がポップル錯視と関連付けたことで有名になった。この原理は文字を形成する横棒が均等に上下に分配されるため発生する。ほかに「科研交付」などと入力してもこの錯視は発生する。
[編集] 色の錯視
- 色の対比
- 色の同化
- マッハの帯
- シュブルール錯視
- パザルリ錯視
- ムンカー錯視
- ネオン色拡散
- ベンハムの独楽
白と黒で塗り分けた独楽を回すと、色感覚が生まれるという錯視。
[編集] 色の同化
背景の色は全て同じであるが、元の色よりも線の色に似た傾向の色に見える。これを色の同化という。
[編集] その他
AとBのタイルの色は同じ
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
[編集] 参考文献
後藤 倬男 編, 田中 平八 編 錯視の科学ハンドブック 東京大学出版会
ISBN978-4-13-011115-7
※一連の幾何学錯視図形(ツェルナー、ポンゾ、ポッゲンドルフ、フィック、オッペル・クント、デルブーフ)は本編の参考図及び、各錯視における定義を参考に、市販図形描画ツールにて作成した。また、その他の幾何学錯視における説明も、本誌の凡例を参考にしたものである。