長次郎
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長次郎(ちょうじろう、?-天正17年(1589年))は、安土桃山時代を代表する陶芸家。楽焼の創始者であり、千家十職の一つ・樂吉左衛門家の初代とされる。
[編集] 略伝
父は明出身の工人・あめや(「飴屋」「飴八」「阿米也」)、母は「比丘尼」とされる。しかし、出自については、かなり身分の低い出身ではないか、と推測される以外は未だに不明な点が多い。
現存中最も古い作品は、「天正二年春 寵命 長次良造之」という彫の入った二彩獅子像(樂美術館蔵)である。2005年の十五代・吉左衛門らの調査の結果、一部に緑釉や化粧掛けの白泥が施された上に二彩釉や三彩釉がかけられ、中国南部の華南三彩と共通する手法が見られる。なお、この作品については留蓋瓦とする意見があるが、底部形状から否定する見方もあり結論が出ていない。
後世の記録「宗入文書」(元禄元年(1688年))の伝えるところによると、妻に田中宗慶の孫娘を迎え、後に宗慶とその長男・田中庄左衛門宗味、次男・吉左衛門常慶(後に樂吉左衛門家二代当主)らとともに工房を構えて作陶を行なった。 田中宗慶はその苗字から千利休の縁戚ではないかと想定され、常に利休の側にいた事が知られる。
現存する茶会記の記録内容から、天正年間に宗慶を介して千利休と知り合ったと推定される。それまで国内の茶会で主流であった精緻な中国製の茶陶よりも歪みのある作品を好む利休によって、ろくろを使わず手びねりで成形を行なう独自の工法が認められ、のち注文によって茶碗を納めるようになる。
天正17年(1589年)に死去。
[編集] 代表作
- 二彩獅子像(天正二年銘):樂美術館蔵
- 赤楽茶碗 銘「無一物」:頴川美術館蔵、重要文化財
- 黒楽茶碗 銘「勾当」
- 黒楽茶碗 銘「大黒」:旧鴻池家蔵、現在個人蔵、重要文化財
- 赤楽茶碗 銘「一文字」:旧益田孝蔵、現在個人蔵
- 黒楽茶碗 銘「俊寛」:三井文庫蔵、重要文化財
[編集] 参考文献
- 永樂善五郎『現代の千家十職』淡交社、1986年12月 ISBN 4473009726
- 『千家十職 茶の美の創造』(淡交別冊愛蔵版 №21)
- 三井記念美術館 編『赤と黒の芸術楽茶碗』三井記念美術館、2006年9月
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