電波系
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電波系(でんぱけい)とは、妄想や妄想癖のある人を指したり他者とのコミュニケーションをとろうとしない人を指す言葉。
元々の意味は「頭の中に何者かからの声、思考、指示、妨害が電波で届くと称する人」のことを指していた(こうした「幻聴」は、かつて電波が一般的でなかった時代は「動物」や「霊」によるものともされ、「キツネ憑き」などと呼ばれていた。)が、他の意味での用途や別の見解が入って変質してしまった部分も少なくない。
サブカルチャーやオタク系のメディアで用いられることの多い表現である。他に、「電波」「デンパ」「デムパ」「毒電波」などとも表記、表現する。
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[編集] 概要
1970年代には警察隠語(差別語)で極左のことを「マル精」(精神病者)あるいは「デンパ」と呼ぶことがあり、これに由来するという説がある。
1981年の深川通り魔殺人事件の犯人が、己の行動を電波が命令したと証言した事で世間にひろまった。このような妄想を電波体験という。その後、過去に統合失調症(旧・精神分裂病)の妄想に対して用いられるようになった。また、1980年代後半より、電磁波の人体に対する影響が問題視され始め、特に頭部や脳への影響が示唆された。そのため、電波を身体に受けると脳がおかしくなると言った短絡的な見方も発生した。このことも「電波」という言葉を定着させた一因である。
1990年代前半より「電波」という言葉は、サブカル界に影響力のある歌手やライターの手により広がった。大槻ケンヂは早くから「電波」の概念をバンド筋肉少女帯の歌詞やタイトル(例えば、『妄想の男』や『電波BOOGIE』など)に使用し、1992年には小説『新興宗教オモイデ教』で毒電波(「メグマ波」)というアイデアを中心に据えた。
同じ頃、『サルでも描けるまんが教室』にも作中で相原コージと竹熊健太郎が『とんち番長』連載中にノイローゼ状態から言霊を受けて「白電波、黒電波」をストーリーに持ち込むシーンを描いている。
とりわけ、「特殊漫画家」根本敬は「電波系」という用語を案出し、その概念の普及に大きな役割を果たしている。1990年代前半より、こうした電波を受けて行動する奇妙な人々のレポートを雑誌等に執筆、また電波が自らの頭の中に響くという村崎百郎と対談や共同執筆を行ったことで「電波系」という言葉は読者に強い印象を与えることになった。
アダルトゲームである『雫』が狂気を誘発する源として「毒電波」と表現したことはこれらの影響、特に大槻ケンヂの影響を受けたもので、「電波系」をさらに広めることになった。その後、主にオタク系の妄想に対しても用いられるようになった。
類義語として「きちがい」という言葉があるが、差別用語として定着し、放送禁止用語に指定されるなど規制が多い。そのため、代わりに「電波」という表現を用いる事もある。差別的意味合いも持ち、侮蔑したり、ふざけて使われることもある。
[編集] メディア
[編集] 関連書籍
- 『サルでも描けるまんが教室』: 著者: 相原コージ・竹熊健太郎、出版社: 小学館、ISBN 4091790518、(1990/10)
- 『電波系』: 著者: 村崎百郎・根本敬、出版社: 太田出版 ISBN 4872333055、(1996/9)