¥記号
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円記号(¥)は日本の通貨単位の円や中国の人民元(Yuan)などを表す通貨記号である。金額を表す数値の前に置いて使用する。
この円記号は、コンピュータでの取り扱いに厄介な問題(円記号問題)を抱えた記号のひとつとして知られる。
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[編集] 円記号の由来
[編集] 日本における用法
数字の前につけることにより〜円という意味になる。
例 ¥200(200円)
[編集] コンピュータにおける円記号の扱い
[編集] 日本語用文字コードにおける円記号
日本語用の文字コードであるJIS X 0201では、円記号は0x5C番地に割り振られている。
JIS X 0201は、米国で制定された文字コードであるASCIIをベースにした国際規格のISO/IEC 646に基づくものである。ISO/IEC 646は128文字分の領域を持つコード体系だが、このうち12文字は各国で自由に決めてもよい領域とされていた。JIS X 0201で円記号が割り当てられた0x5C番地はこの12文字の1つであり、本家の米国版ASCIIではバックスラッシュ(\)記号が割り当てられていた番地である。
従って、ASCIIなどで記述された文書をJIS X 0201によるものと解釈して読むとバックスラッシュ(\)が円記号(¥)に文字化けすることとなり、逆もまた同様である。現在広く用いられている日本語用文字コードのShift_JISなどにもJIS X 0201に基づく部分があり、それらでも同じ現象が発生する。
ASCIIなどにおけるバックスラッシュは、MS-DOSではディレクトリ名を区切る記号として、C言語なら文字列の中で特殊文字を意味する記号として扱われるなど、各種オペレーティングシステムやプログラミング言語、その他のソフトウェアで制御コードとして利用された。 日本語用の文字コードにはバックスラッシュが存在せず、同じ0x5C番地に円記号が割り当てられているのであるが、これらのソフトウェアでは(そこが何を表す文字かに関わらず)0x5C番地の文字が制御コードとして扱われるようにされていたため、日本語用文字コードでは円記号が同等の制御コードとして使用されることになった。
[編集] 西ヨーロッパ言語用文字コードにおける円記号
西ヨーロッパで使われている文字コードであるISO-8859-1は、0x5CはASCIIと同じくバックスラッシュであり、円記号は別の番地0xA5に配置されている。従って、ISO-8859-1の円記号は制御コードとはならない。また、日本語用文字コードで記述された文書をISO-8859-1によるものと解釈して読む場合、やはり、円記号がバックスラッシュに文字化けする。
[編集] Unicodeにおける問題点(円記号問題)
日本語用文字コードからUnicodeに変換する際に発生する、円記号の扱いについての問題である。
[編集] Unicodeへの統合
世界の文字コードを単一の体系で包含するためUnicodeという文字コードが生まれた。Unicodeに世界のあらゆる文字を含ませ、あらゆる文書をUnicodeで表現できるようにすることが目指された。世界の各種文字コードの文字はUnicodeの文字と対応付けられ、それに従って各種文字コードからUnicodeへの変換を可能にするものであったが、円記号の扱いについては問題があった。
前述のとおり、日本語用の文字コードでは円記号が0x5Cに位置し、制御コードとして扱われる。それに対し、西ヨーロッパ言語用のISO-8859-1は0x5C(バックスラッシュ)とは異なる番地の0xA5に円記号が配置されており、円記号は制御コードとして扱われない。したがって、これらの文字コードで書かれた文書をUnicodeに変換し、いずれの円記号をもUnicodeの円記号(U+00A5)にマッピングした場合、変換後の円記号はバックスラッシュ(U+005C)と同等の制御コードと見なすべき日本版の円記号なのか、文字の一種でしかないヨーロッパ版の円記号なのか判別できなくなってしまうのである。また、Unicodeの円記号(U+00A5)を制御コードと見なさないものとすれば、制御コードとして使われている円記号はU+005C(バックスラッシュ)に、そうでないもの(通貨単位などを表すために使われているもの)はU+00A5(円記号)に変換せねばならないが、この処理は困難である。
[編集] 現実的解決
この問題に対する現実的解決のひとつが、マイクロソフト製のOSで実装されている変換法である。マイクロソフトの変換法では、日本の円記号はUnicodeのバックスラッシュ(U+005C)に変換される。そして、日本語用のフォントではバックスラッシュ(U+005C)を円記号として表示してしまうのである。
賛否の多い対応ではあったが、旧来のソフトウェアを捨て去ることなくUnicodeを利用できる現実的な方法として広く使われている。
[編集] Shift_JISにおける問題
Shift_JISでは文字の2バイト目が0x5C(円記号・バックスラッシュ)と成りうるため、当該箇所が誤って制御文字と認識されてしまい、問題が発生することがある。この問題の詳細については、Shift_JIS#2バイト目が0x5C等に成りうることによる問題を参照すること。
[編集] 参考文献
- S. Gorn, R. W. Bemer, J. Green: American Standard Code for Information Interchange, Communications of the ACM, Vol.6, No.8 (1963年8月), pp.422-426.
- 情報処理交換用 新標準コード案 決定さる, 情報処理, Vol.6, No.6 (1965年11月), pp.173-174.
- 海宝顕: 電子計算機と情報処理におけるコード標準化の現況と課題, IBM Review, 第17号 (1967年7月), pp.167-176.
- R. W. Bemer: A View of the History of the ISO Character Code, The Honeywell Computer Journal, Vol.6, No.4 (1972年), pp.274-286.
- 山下良蔵: MS-DOSの漢字機能, ASCII, Vol.7, No.5 (1983年5月), pp.228-230.
- The Unicode Standard, Version 1.0, Vol.1, Addison-Wesley, Reading, 1991.
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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