IBM形式フロッピーディスク
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フロッピーディスクにおける「IBM形式」とは、IBMのレガシーコンピュータにおいて採用された8インチディスケットの形式を模した形式を総称する言葉である。実際には様々なベンダ(メインフレーマー)が様々に拡張して利用しているため、機種依存性が高い。
5.25インチ、3.5インチのIBM形式については、8インチのフォーマットである「IBM Diskette 2D」を2HDで再現したフォーマットである。これは日本でしか利用されておらず、日本の独自規格のようなものである。ともあれ、現在IBM形式という名前で利用されているのは、3.5インチのものがほとんどである。
IBM形式では、0シリンダの表側をインデックス領域として使う。インデックス領域はEBCDICで記述される。また、インデックス部はFM方式で書き込まれ、データ部はMFM方式で書き込まれる。
ちなみに、フロッピーディスクのIBM形式は、MOのIBM形式とは全く関係が無い。
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[編集] 各社独自のIBM形式
- 日立の2HDのIBM形式では、レコードブロックがトラック境界をまたいだ配置を許さない。
- 三菱電機の2HDのIBM形式は、ディスクの回転速度が300RPMである。しかしながら、論理フォーマット後の容量は「IBM Diskette 2D」に合わせて985KBとなっている。
- 富士通では、セクタ容量1024バイト(総容量1.21MB)でありながら、その他の仕様が「IBM Diskette 2D」に準拠した形式も扱う。
- 東芝のレガシーコンピュータではIBM形式と似たフォーマットを採用する。特徴はインデックス領域がJIS X 0201の8ビット符号表現(JIS8)で表現されていることである。
- 特許出願形式と呼ばれるものもIBM形式と似ている。東芝形式と同じくインデックス領域をJIS8で表現する。ちなみにこの特許出願形式をIBM形式と呼ぶことはない。
[編集] IBM形式フロッピーディスクの用途
かつては、銀行との取引の際に全銀フォーマットのデータを格納するのによく使われた。現在では、全銀フォーマットデータの格納にはDOS形式フロッピーディスクを利用することが多くなった。
[編集] IBM形式のファイルシステムの特徴
- 標準では、固定長順編成のデータしか扱えない。WindowsやUnixのファイルシステムのようにバイトストリームを書き込みたい場合は、もう一段アプリケーション側で処理をする必要がある(メインフレームでは当然そのような使い方はしないし、OSの機能でIBM形式を扱えないWindowsにてそういうプログラムを作成する理由も無い)。
- サブディレクトリ構造を持たない。
- 一度アロケートされた領域を再アロケートするためには、スクイーズ(コンデンス)処理をしなければならない。それゆえ、ファイルの削除を行ってもディスクの未使用領域が増えない。
[編集] IBM形式と3モード
IBM形式のフロッピーディスクは一般的に360RPMの回転速度でアクセスされる。しかしながら、3モード対応のドライブさえあれば、IBM形式を扱うためのハードウェアの要件を満たしていると考えることは出来ない。3モード対応であってもIBMフロッピーを扱えない場合が存在するからである。
3モードの要件とは、2HDと2DDのフロッピーを300RPM及び360RPMの回転速度でアクセスできることである。IBM形式を扱うためには、それだけでなく、FM(単密度)アクセスの能力が必要である。DOSフォーマットでは全てのトラックがMFM記録なのに対して、IBM形式では一番外側シリンダの表側トラック(ファイルインデックス領域)がFM記録されているからである。
ちなみに、三菱電機の2HDのIBM形式は、300RPMで回転するため、3モードとは無縁である。ただし、0シリンダは、300RPMのFMアクセスで読み書きされる。
[編集] IBM形式と総称されるフォーマット群
形式名 | 回転数 | 容量(ア) | 容量(フ) | セクタサイズ | セクタ数 | ヘッド数 | シリンダ数 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
★ | 8インチ1S | 360RPM | 400KB | 243KB | 128バイト | 26 | 1 | 77 |
★ | 8インチ2S | 360RPM | 800KB | 493KB | 128バイト | 26 | 2 | 77 |
★ | 8インチ2D | 360RPM | 1.60MB | 985KB | 256バイト | 26 | 2 | 77 |
5インチ2HD | 360RPM | 1.60MB | 985KB | 256バイト | 26 | 2 | 77 | |
3.5インチ2HD | 360RPM | 1.60MB | 985KB | 256バイト | 26 | 2 | 77 |
- ★がつくものは海外でも利用されている形式。その他は日本国内でしか利用されていない。
- 「容量(ア)」はアンフォーマット容量、「容量(フ)」はフォーマット容量を表す。
- IBM形式では77個のシリンダの内、0番目をインデックスとして、末尾の二つを予備用として利用するため実際にデータとして使えるのは74個のシリンダである。
[編集] IBM形式フロッピーディスクをPCで扱うための製品(外部リンク)
- 『F*TRAN2006 V1.0R2』 株式会社富士通ビー・エス・シー
- 『コンバートスター統合版16』 システムポート株式会社
- 『52DISKL32』 アドバンスソフトウェア株式会社
- 『ID アソートV ProII』 有限会社エヌ・ピー・ピー
- 『ダイコンヴ X』 有限会社イーディーソフト