光磁気ディスク
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光磁気ディスク(ひかりじきでぃすく、Magneto Optical Disk、MOディスク)とは、赤色レーザ光と磁界を用いて磁気記録を行い、レーザ光を用いて再生を行う記録媒体の一つである。
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[編集] 概要
光磁気ディスクには磁性を持った記録層が形成されており、外部から電磁石による記録用の磁界を加えて媒体を磁化することでは磁気ディスクと似ているが、記録層が常温では殆ど磁化されず、これを熱して磁化する点に特徴がある。記録の際に光の強度を変化させ、磁界を一定とする光変調方式と、光の強度を一定として磁界を変化させる磁界変調方式とがある。
[編集] 記録方法
磁界変調方式では、以下の手順によってデータが記録される。
- メディアの磁性層に高出力のレーザー光を照射して、磁性が失われる温度(キュリー温度...ISO規格のMOでは摂氏150度〜180度)以上にまで瞬時に加熱する
- レーザーで照射された部分が、レーザー光から離れて磁性を記録保持できる温度まで冷え始めた所で、電磁石により記録層と垂直方向の磁界を与える
- 磁性体が十分に冷えて、磁性が完全に保持される
この繰り返しにより磁性体にN極とS極の磁性が記録されていく。読み出し時には書き込み時よりも出力の弱いレーザーを照射し、N極とS極の向きの違いによってレーザーの偏光面が回転する現象(磁気光学カー効果)を検出し、それを0と1のデータとして読みとっている。
また、光変調方式ではまず一定磁界・高出力レーザ光により記録層の磁力を一方向にそろえることで初期化(消去)し、続いて加える磁界を反転したうえで、磁力を反転して記録したい部分を光で加熱して磁気を反転させることにより記録を行う。
[編集] 各種の光磁気ディスク
[編集] ISO規格のMOディスク
[編集] 概要
通常MOと呼ばれるのは着脱可能な記憶媒体(リムーバブルメディア)の一つ。記録方法は光磁気変調方式。トラックはフロッピーやHDD(ハードディスクドライブ)とは違い、螺旋状になっている。しかし、シークができないクイックディスクに対し、MOはランダムアクセスが可能。
一般的にパソコンで用いられる3.5インチタイプのメディアでは、128MB・230MB・540MB・640MB・1.3GB・2.3GBの容量がある(GBクラスの容量を持つものは「GIGAMO;ギガモ」と呼ばれる)。他にも5.25インチタイプのメディアがあり、パソコン及びワークステーションやサーバーで用いられ、最大で9.1GB(両面)の容量がある。
面白いことに、3.5インチの640MBまでのMOは内周からアクセスを開始するが、GIGAMOでは外周からアクセスする。また、5.25インチメディアではディスク両面に記録している。5.25インチメディアにはほかにも興味深い点があり、WORM(Write Once Read Many、すなわち追記型)タイプや医療専用メディアまで存在する。
3.5インチメディアはフロッピー2枚分の厚さを持つプラスチックのカートリッジに収められている。このため記録面は指紋や傷などから保護され、むき出しのメディアより指紋や傷がつきにくい。また、ドライブの利用に際しても特にデバイスドライバは必要なく(一部のOSとUSB接続タイプのMOドライブの組み合わせを除く)、データの読み書きもフロッピーと同様の感覚で(つまりライティングソフトなしで)行うことができると共に、下位互換性があるために旧来のメディア(例:128MBメディア)を最新のドライブ(例:2.3GB対応ドライブ)で利用することも可能である。但し初期規格のメディアを最新規格のドライブで書き込む事が出来ない等の制限はある。
メディアの耐久性も高く、各メディア製造メーカーの加速劣化試験によると、データ保持寿命は推定50年から100年とされ、現在もMOの耐久性に匹敵するメディアは存在しない事から、プロユースを中心とした需要は根強い。なお、MOの書き換え回数はハードディスクドライブをも上回る1000万回とされる(GIGAMOは10万回以上。業務用1.3GBタイプはMSR不使用のため100万回以上と言われている)。対するハードディスクドライブは100万回以上とされる。
3.5インチメディアにおいては、近年ではMedia IDと呼ばれる著作権保護機能が備わったメディア/ドライブが発売されている。
5.25インチメディアは3.5インチメディアが普及する以前に発売され、円盤の大きさはコンパクトディスクとほぼ同じで通常はDVD-RAMカートリッジとほぼ同形状のカートリッジケースに収められているが、使用される機器によりケースに収めていない場合もある。
[編集] 大容量化
3.5インチMOはこれまでに幾多の技術を盛り込んで大容量化してきた。その技術のすべてを以下に挙げ、解説する。
- 128MB:マークポジション記録、CAV、512バイト/セクタ、グルーブ記録
- 230MB:ZCAV
- 640MB:マークエッジ記録、2048バイト/セクタ
- 1.3GB:MSR
- 2.3GB:ランド&グルーブ記録
MSRは磁気超解像(Magnetically included Super Resolution)のことで、フロントマスクとリアマスクによってレーザーのビームスポット(照射面積)を狭めることで記録密度、読み取り精度を向上することが出来る。また、素材が摂氏150度になったときだけ記録層の磁気を再生層に転写する中間層を設け、読み取り精度を高めている。しかし、この読み取り方式の特性上、従来よりも読み取り用レーザーの出力が約7倍に高まることになり、結果として書き換え回数を激減させてしまった。
このほか、磁区拡大再生技術(MAMMOS:Magnetic AMplifying Magneto-Optical System)や磁壁移動検出方式(DWDD:Domain Wall Displacement Detection)といった記録再生技術や青紫色レーザーを利用することで、5.25インチサイズで最大200GBの容量が見込まれている。このうちMAMMOSは従来のレーザー波長で20GB/12cm、現時点でのDWDDは従来のレーザー波長で3GB/5cmの容量とされる。なお、DWDDの技術目標は100GB/12cm、青紫色レーザーで200GB/12cmを見込んでいる。 ちなみに、DWDDを用いたメディアとしてHi-MDがある。Hi-MDはMDの上位互換のメディアで、MDと同じサイズで1GBを実現している。
[編集] 記録方法の高速化
当初のMOディスクへの書き込みは、ディスクの1回転毎に
- 磁性層のデータ消去(フォーマット)
- 磁性層へのデータ記録(書き込み)
- 磁性層に書かれたデータの検証(ベリファイ)
の三行程を行っていたため、ヘッド‐MO間の物理的なデータ転送速度が遅かった。
寸法の大きい5.25インチタイプでは、複数のレーザーを照射し、複数の行程を同時に行い、物理的なデータ転送速度を速くしたドライブもある。
現在では
- 「消去」と「記録」を1回転中の工程で行う技術(ダイレクトオーバーライト)(対応するドライブとメディアを組み合わせて使用した場合のみ有効)
- ディスクの回転速度向上(1996年末で最大3,600rpm → 2005年末で最大6,750rpm)
- ディスクのデータ密度向上
などの方法によって物理的な書き込み速度を向上させると共に、MOドライブに搭載されるキャッシュメモリの大容量化とキャッシュコントローラーの改良によるデータ転送の改善も図られている。
[編集] MOの耐久性
MOの耐久性は次のような要因による。
- カートリッジに収められていることで、傷や埃によるダメージが少ない
- ディスクの両面を覆う分厚いポリカーボネート製の保護層により傷へのさらなる耐久性が高まる
- 記録時のレーザーの出力がCDやDVDと比較するとはるかに弱いためディスクへのダメージが少ない
- 加熱しないと磁気の影響を受けないため、磁石を近づけただけではダメージを受けることはない
- CD-R、DVD-Rとは違い、紫外線の影響はほとんど受けない
- フロッピーとは違い、ヘッドが接触することがないためディスクやヘッドが摩耗することはない。
その他のメディアが抱える弱点に悩まされる事が少ない点が、MOに対する根強い支持に繋がっている。
[編集] 普及状況
MOの普及率は、世界的に見た場合には決して高いものではなく、むしろかなり珍しい部類に入る。1990年代にはドライブ単価の安いZipドライブが世界中で爆発的な普及を見せ、MOは他のリムーバブルメディア共々その余波をまともに浴びて普及は微々たるものであった。その後、90年代後半からは記録型光ディスクが安価に出回るようになり、さらにはフラッシュメモリーの大容量・低価格化による普及も進んでいるため、MOは地味な(あるいはそれ以下の)存在のままである。
一方、日本国内においては当初から企業や官公庁を中心に登場時からデータの保存・運搬用として広く普及しており、デスクトップパブリッシングやデザイン、印刷・出版の分野ではその信頼性の高さとコストパフォーマンスの良さから広く使われている。90年代にはZipドライブの急激な普及に押され気味だった時期もあったが、Zipドライブが衰退し始めてからは再び勢いを取り戻している。家庭や事務所への普及率はCD-RWやDVDドライブがパソコンに標準搭載される事が急増し、さらにフラッシュメモリーが安価に出回るようになり始めてからは低下の一途を辿った。そんな中でも、小型のドライブやUSBバスパワータイプが登場し、また信頼性に長けたメディアとして見直されている事もあり、業務用GIGAMOドライブ・ディスクが販売されたことを見ても、当面は地味な存在ながらも生き長らえ続けるとの見方が強い。
現在、ディスクドライブは富士通、コニカミノルタ、でのみ製造されている。以前はオリンパスもドライブを製造していたが、2005年後半に生産を中止、2006年3月にMO事業から完全撤退している。
[編集] 標準
- ISO/IEC 10090(128MB)
- ISO/IEC 13963(230MB)
- ISO/IEC 15041(540MB / 640MB)
- ASMO 5インチ
- GIGAMO 3.5インチ (1.3GB / 2.3GB) ※GIGAMOにはオーバーライトメディアはない
[編集] MD
音声録音用の光磁気ディスクである。ミニディスクを参照。
[編集] HS(Hyper Storage)
ソニーが開発した光磁気ディスクで、3.5インチフロッピーディスクとほぼ同じサイズのカードリッジに納められており、容量は約650MB。HSの開発にあたっては日立、3Mが協力している。
1995年にソニーから発表され、将来的には2002年頃までに約2.5GBに容量を段階的に拡大する予定であった。しかし当時普及していたMOとの互換性がない上に、MOと比べてドライブやメディアが高額であったため普及しなかった。
現在はドライブ、メディアとも製造及び販売は終了しており、開発も停止されたままである。
[編集] その他
1980年代~1990年代前半に、磁気テープに代わる映像記録媒体として研究開発が行われ、アナログあるいはデジタル記録媒体として実用化された。ハードディスクの大容量化によって、ほぼ代替されている。 但し、1990年代後半から将来来るであろうハードディスクの記録密度の限界が問題視され、各磁気ディスクメーカーでは高速リードライト、高記録密度の光ディスクを研究している。
[編集] 実用化例
- 30cm両面アナログ記録媒体(1992):NTSCまたはPALのアナログ映像信号を記録
- 20cm片面デジタル記録媒体(1989):1.8GB/96Mbps。D2互換のNTSCコンポジット映像信号を記録
- 30cm両面デジタル記録媒体(1995):23GB/96Mbps。同上
[編集] MOの論理フォーマット
MOの論理フォーマットは、2つのグループに分けられる。
- ハードディスク形式
- スーパーフロッピー形式
[編集] ハードディスク形式
ハードディスク形式は、MOをハードディスクのようにフォーマットした形式である。
以下のような特徴がある。
- AT互換機においては「FDISK形式」と呼ばれるものが使われる。
- FMRシリーズ・FM TOWNSにおいては「富士通形式」と呼ばれるものが使われる。
- その他PC-9800シリーズ、Macintosh、Unix等にも独自のフォーマットがある。
- パーティション分割可能。
[編集] スーパーフロッピー形式
スーパーフロッピー形式は、MOを大容量のフロッピーディスクのようにフォーマットした形式である。
以下のような特徴がある。
- 主にWindowsシステムにて利用される。
- パーティション分割ができない。
スーパーフロッピー形式をさらに分類すると以下の二つの形式が存在する。
- IBM形式
- セミIBM形式
「MS-DOSフォーマット済み」として市販されているMOはこのスーパーフロッピー形式である。
ちなみに、この「IBM形式」は、フロッピーのIBM形式とは全く関係が無い。