RAH-66 (航空機)
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RAH-66は、ステルス技術が反映されたアメリカ合衆国の試作武装偵察ヘリコプターである。愛称はコマンチ(Comanche)、開発は、ボーイングとシコルスキー両社により行われた。開発計画は2004年2月に打ち切られたが、同国にて最初の全天候型ステルス偵察ヘリコプターであった。
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[編集] 開発
アメリカ陸軍は現在OH-58Dカイオワという武装偵察ヘリコプターを運用しているが、このOH-58Dはベトナム戦争時代に開発された観測ヘリコプターの改良版であり、専用に開発されたものではなかった。対してコマンチは武装偵察専用に開発されたヘリコプターである。AH-64アパッチよりも小型軽量(コマンチは全長13.1m、重量3.5tでありアパッチは全長17.7m、重量5.2t)また、当機の最大の特徴が、複合素材を利用した機体に施されたステルス装備であり、機体はレーダー反射面が小さくなるようにF-117(攻撃機)同様に多角形で構成され、表面にはレーダー波吸収剤が装備されている。またミサイルやロケット弾のポッド、20mm機関砲はレーダーで捉えられやすいため収納式になっている。また味方の戦闘機から発射されたミサイルを自身の目標に向かって誘導する能力も持ち合わせている。また静穏性にも配慮がなされており、同じタイプのヘリコプターよりもエンジンの騒音が小さく抑えられている。
コマンチの非常に優れた探知航行システムは夜間作戦、悪天候時の作戦に特に真価を発揮する。機体のデザインもアパッチよりも輸送機に搬入させやすく設計されており、前線への投入もスムーズである。輸送機が無い状態であってもコマンチの航続距離は2330kmに及び、この長大な航続距離のおかげでコマンチ自身で基地から作戦空域まで飛行していくことが可能である。
合衆国陸軍では2004年にコマンチを導入し、合計で1300機導入して偵察及び攻撃ミッションに使用する計画であった。それに当たって陸軍ではプロトタイプを使用して飛行試験を行った。最初のプロトタイプは1995年5月にシコルスキーエアクラフトにて完成し、同年12月に初飛行に成功した。
試作機の完成に伴い、この計画は開発改良段階へと移行し、この段階で更に8機の製造が執り行われると共に、これらの機体の初飛行が2006年6月に行われることとなった。
[編集] 計画中止
開発計画の只中であった2004年2月23日、老朽化した既存の多目的偵察ヘリを刷新するために軍事予算を投入する理由で、合衆国陸軍はコマンチ計画を中止すると発表した。また軍内部でUAV(Unmanned Aerial Vehicles:無人機)によって偵察任務を遂行させることに期待する声が高まったほか、イラクやアフガニスタンでの戦争で実際にUAV(プレデターやグローバルホーク)が偵察任務で活躍したことから、さらにUAVの開発を行うための予算を確保するという要因もあった。計画中止段階ですでに80億ドル近い開発費が投じられており、さらにキャンセル代としてシコルスキーとボーイングに4.5億から6.8億ドルが支払われたとされる。
このRAH-66コマンチの計画によって培われた技術は、AH-64 アパッチやその他の軍用ヘリコプター開発に活かされるという。またコマンチを活用する計画だった計画の一部は現用のARH-70偵察ヘリコプターに引き継がせる。
現在プロトタイプのコマンチ2機(95-0001、94-0327)は陸軍の航空ミサイル研究開発センターに保管されている。この2機は現在技術支援部の管理下にあるが、95-0001の機体に関しては軍に再び委譲され2007年にアラバマ州フォートラッカーの陸軍航空博物館にて展示される計画がある。
[編集] 諸元
[編集] 諸元
- 乗組員:2名
- 全長:13.22m
- 回転翼直径:11.90m
- 高さ:3.39m
- 空虚重量:3402kg
- 最大離陸重量:7790kg
- 発動機:LHTEC T800 2688馬力ターボシャフトエンジンx2
[編集] 性能
- 最大速度:328km/s
- 巡航速度:294km/s
- 航続距離:2330km
- 上昇速度:6m/s
[編集] 武装
- 3銃身20mm機関砲(装弾数500発)
- 内部ウェポンベイ:ヘルファイヤミサイルx4、スティンガーミサイルx4
- 最大搭載量(武装用スタブウィングを使用した場合):ヘルファイヤミサイルx14/スティンガーミサイルx28/ハイドラ70mm対地ロケット弾x56
[編集] 関連項目
- OH-1:陸上自衛隊で運用される川崎重工業製の武装偵察ヘリコプター
- ARH-70:合衆国陸軍の現用偵察ヘリコプター