SoftEther
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SoftEther(ソフトイーサ)は登大遊(2006年4月現在、筑波大学第三学群情報学類4年)によって開発され、2003年12月に発表されたVPNソフトウェア。及び同ソフトを開発した法人ソフトイーサ株式会社。登が代表取締役会長を務める。子会社だったソフトイーサVPN株式会社(-ぶいぴーえぬかぶしきがいしゃ、英:SoftEther VPN Corporation)は2006年4月1日ソフトイーサ株式会社と均等合併した。
同ソフトの次世代版PacketiX VPNとともに本稿で詳述する。
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[編集] 概要
SoftEtherおよびPacketiX VPNはLANカード・スイッチングハブを忠実にエミュレートしEthernet Over IPを実現。通常のIPネットワーク上に仮想イーサネットを作ることができる。HTTP Proxy/ SSH / Socks のいずれか(PacketiX VPNは HTTPS Proxy / SOCKS のみ)を使って通信するため、通常のファイアーウォールを通過することが可能である。
SoftEtherは情報処理振興事業協会 (IPA) が主催する未踏ソフトウェア創造事業 未踏ユース部門に採択され、支援をうけ開発された。2004年4月以降はソフトイーサ株式会社によって開発が行われており、同社公式サイトで配布される無料版のほか、法人向けの商用版「SoftEther CA」が三菱マテリアル株式会社から発売されている。
以下、無料配布版SoftEtherの概要について述べる。現在は配布終了している。
[編集] 動作環境
- Windows Server 2003
- Windows XP
- Windows 2000
- Linux版はSoftEther仮想HUBのみ公開されていた。
[編集] 構成
SoftEtherを構成する主なソフトウェアは以下の通りである。
※上記2つは独立してインストール可能。
- デバイスドライバ
- SoftEther仮想LANカードアダプタ - 通常のLANカード同様、Windowsのデバイスマネージャに登録され、コントロールパネルの「ネットワーク接続」から設定可能。MACアドレスは自動で設定される。
- 管理用ソフトウェア
- SoftEtherドライバとサービスの設定 - 上記3つの起動/停止/インストール/アンインストール、仮想LANカードに付けられたMACアドレスの設定変更をここから行える。
- SoftEther仮想HUB管理クライアント - 仮想ハブがインストールされたコンピュータに接続し管理コンソールを開く。
- SoftEther接続マネージャ - 仮想ハブへの接続/切断を行う。HTTP Proxy/SSH/Socks経由での接続が必要な場合はここで設定する。
[編集] 主な機能
- 仮想LAN上での通信は独自の通信プロトコル(SoftEtherプロトコル)を用いて行われる。OSやネットワーク機器はSoftEtherプロトコルを含むTCP/IPパケットを通常のTCP/IPパケットと区別できないため、一般的なファイアーウォール等を通り抜けることが可能である。
- 仮想LANカードをインストールしたコンピュータ上で、WindowsXPまたはWindowsServer2003の機能を用いて仮想LANと物理LANをブリッジ接続することができる。
- 仮想LAN内でDHCP・NATの運用が可能である。
- 仮想ハブによるパケットフィルタリング機能、ログ保存機能。
- 仮想ハブコンポーネントと仮想LANコンポーネントの両方を1台のコンピュータにインストールすることにより、クライアントとなるコンピュータが仮想ハブの機能を兼ねることができる。
[編集] PacketiX VPN
Softether次世代版はPacketiX VPNと改称し、2005年12月28日にバージョン2.0として正式公開された。同時にWeb上におけるライセンスサーバーも運用開始された。なお、事実上非商用ライセンスは廃止された。
以下、PacketiX VPNの概要について述べる。
[編集] ソフトウェア構成
- サーバとなるVPN Server
- クライアントとなるVPN Client、
- VPN Serverへのブリッジ接続を行うVPN Bridge
- ServerとBrigeのGUI管理マネージャ(Windowsのみ)
- ServerとBrigeとClientコマンドライン管理ユーティリティ
[編集] VPN Server
[編集] 製品エディション
ライセンスの違いによって以下のエディションがある。
- Standard Edition
- 接続数はクライアント・ブリッジともライセンス数ぶんのみ。
- クラスタリング不可。
- Enterprise Edition
- 接続数はクライアント・ブリッジともライセンス数ぶんのみ。
- クラスタリング可能。
- Free Edition
- 接続数は無制限。
- クラスタリング可能。
- 研究機関および非営利目的の研究を行なう団体、個人ユーザーが、下記義務を負った上で使用できる。
- 研究課題(具体的な内容)の報告義務
- 管理者、申込者(担当者)、連絡先の報告義務
- システム構築事例(規模)のソフトイーサ社への報告義務
- 研究の成果物(論文等)のソフトイーサ社への報告義務
- SOHO Edition
- クライアント接続が3本まで。ブリッジ不可。
- クラスタリング不可。
[編集] 動作環境
以下はサポート対象。いずれも32bit版のみ。64bit(x64)版は対応準備中。 Linux版は一部ディストリビューションで特定カーネル以降サポート。
- Windows Server 2003(Standard/Enterpriseのみ、SP1以降)
- Windows XP(SP2以降)(Homeはサポート対象外)
- Windows 2000(SP4以降)
- Red Hat Enterprise Linux AS/ES
- Turbolinux 10 Server
- Fedora Core 4 (製品版ではサポート対象外)
このほかに、以下で動作する(可能性がある)。
- Windows 98 / 98SE
- Windows Me
- Windows NT 4.0 Workstation / Server / Enterprise Edition
- Windows XP Home Edition
- Windows Vista
- Kernel 2.4以降のLinux
- ライブラリのインストールなどの条件あり。
- PowerPCSH4にも対応。
- FreeBSD 5.x以降
- ライブラリのインストールなどの条件あり。
- Solaris 7以降
- ライブラリのインストールなどの条件あり。
- Sparc対応。
- Darwin 7.9.0以降搭載のMac OS X
- ライブラリのインストールなどの条件あり。
[編集] VPN Client
[編集] 動作環境
推奨環境は以下のとおり。
- Windows 2000 Professional / Server / Advanced Server
- Windows XP Professional / HOME / Tablet PC / MCE
- Windows Server 2003 Standard / Enterprise
このほかに以下で動作する(可能性がある)。
- Windows 98 / 98SE
- Windows Me
- Windows Vista
- Kernel 2.4以降のLinux
- ライブラリのインストールなどの条件あり。
[編集] VPN Bridge
[編集] 危険性と反響
[編集] 公開に伴うセキュリティリスクの懸念にまつわる話
SoftEtherを使用することにより、社内LANと外部のコンピュータをネットワーク管理者の許可なく接続することが可能となる。また、ネットワークに関する十分な知識を持たない者がSoftEtherを使用すると社内LANに重大な悪影響を及ぼしかねない。このため発表直後から「SoftEtherを使用することがセキュリティホールの原因になるのではないか」等の懸念の声がIPA及び経済産業省に多数寄せられた。IPAはこれを受けて登に公開停止を強く要請、登は2003年12月24日からSoftEtherの公開を一時停止した。その後登とIPAによる協議を経て、同月27日より公開が再開されている。
[編集] 通信遮断ツール
2004年1月、SoftEther通信ブロックに機能を絞ったファイアーウォールソフトウェア「One Point Wall SoftEther」がネットエージェント株式会社より発売された。またソフトイーサ社自身もSoftEther通信の検出・監視用ソフトウェア「SoftEtherAlert」と遮断用ソフトウェア「SoftEther Block」を開発し、同年8月から無料配布している。
[編集] 適切な管理がされていればリスクは少ない
SoftEther(とPacketix)が動作するには仮想ネットワークカードのドライバが必要であり、いづれの版もインストールするには導入先OSの管理者特権が必要である。したがって、主なクライアントOSとなるWindows XPをクライアントとする場合、
- 社内で用いるPCとアカウントはきちんと会社で管理する
- 一般の社員にはAdministrator権限を与えない
- 私物のPCを会社のネットワークには接続させない
というNT系Windowsの設計思想を考えれば当然とも言える運用を行っていれば、Softether(とPacketix)の導入にまつわるセキュリティリスクは極めて低く抑えられる。しかし、実際にそのような運用を行えている企業・団体がどれだけいるかという点には疑問が残る。
[編集] 関連書籍
- 公式SoftEther活用ガイド(登大遊/村上和美/池嶋俊、アスキー、2004年)ISBN 4756144837
- 魔法のトンネルSoftEther(ランディス、秀和システム、2004年)ISBN 4798008095
[編集] 外部リンク
- ソフトイーサ公式サイト
- つくばエクスプレス つくば駅前 高画質ライブカメラ ストリーミング配信 Web サイト(PacketiX VPNの各種実験目的で運用)
- SoftEther CAサイト
- ネットエージェント社公式サイト