Linux
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Linuxのマスコット「Tux」。1996年にジョン・ユーイングによって描かれた。 |
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OSの系統: | UNIXライク |
最新リリース: | 2.6.20 (カーネル) / 2007年2月4日 |
カーネル種別: | モノリシックカーネル |
ライセンス: | GNU General Public License |
開発状況: | 2.4系および2.6系カーネルのリリース |
Linux(リナックス、リーヌークス、リヌックス、リヌクス、ライナックス、リーナクス)とは、UNIXライクな(UNIXに似た)コンピュータ用オペレーティングシステム (OS) である。
現在では、パーソナルコンピュータに限らず、携帯電話のような組み込みシステムからメインフレームやスーパーコンピュータまで、幅広く利用されている。
目次 |
[編集] 概要
Linuxとは本来、OSの基盤となる中核ソフトウェア「カーネル」のみを指す呼称であるが、今日ではこのLinuxカーネルにGNU ProjectのソフトウェアやX Window Systemなど、別のプロジェクトやライセンスのもとで開発が行われたソフトウェア製品群をパッケージ化し、Linuxカーネルと同時に配布するLinuxディストリビューションを指して、単にLinuxと呼ぶこともある。
Linuxカーネルはその名の通り、OSの根幹としてコンピュータのシステム資源を統括するカーネルであり、これを用いて具体的な応用を可能とするオペレーティングシステムを構成する場合には、他の多数のソフトウェアの助力を必要とする。各種のライブラリやサブシステムを抜きにしてこれらを構成することは不可能であり、さらに具体的な作業や業務に応用する際には、各種サーバやアプリケーション等のソフトウェアも必要となる。GNU Projectではこうしたソフトウェアをフリーで開発・提供しており、実際に大多数のLinuxディストリビューションではライブラリ環境(glibc、GNU Cライブラリ)やツール環境(GNU bintuilsやfile utils等)をGNUのプロダクトに依存しているという事実、またGNU自身のプロダクトではないものの、Linuxカーネルを含め多くのソフトウェアがGNUが提唱するパブリックライセンス(GPL、乃至はLGPL等)に則って開発・提供され、これらのソフトウェアが事実上相互依存している点などからも、Linuxカーネルを用いてUNIXと同等のシステムを構成する場合には、そうしたシステムは「GNU/Linux」などと呼ぶべきとする者もいる(リチャード・ストールマン、またリーナス・トーバルズ自身もGNU/Linuxと呼称している)。
Linuxカーネルを用いて構築されたOS環境は、一般的にはUNIX系OS、UNIX互換OS等として分類される。ただし厳密には、UNIXの標準的なAPIなどを定めた仕様であるPOSIXをおおむね満たしているものの、UNIXの商標を取得していない(商標UNIXではない)こと、たとえ実質的にPOSIXを満たしていたとしてもPOSIX自体を取得していない(POSIXでもない)こと、既存のUNIXからのforkやソースコードの流用等も行われていない(血統上のUNIXでもない)ことなどから、本来のUNIXと混同して扱うことは適切ではない。
後付けではあるが、LinuxをLinux Is Not UniXの略としたり(GNU's Not UNIX)、LINus UniXの略としたりする者もいる。
[編集] 歴史
Linuxカーネルは、1991年に当時フィンランドのヘルシンキ大学在学中であったリーナス・トーバルズ (Linus Torvalds) が個人で開発を開始した。最初はアセンブリ言語で記述されたターミナルエミュレータであったが、その後、Minixよりも優れたMinixを作るために拡張された。
当時はIntelの80386 CPUベースの32bit PC/AT互換パーソナルコンピュータが登場し、それまで32ビット環境を扱うために要求されたワークステーションやミニコンピュータ等と比較すれば遥かに安価に、しかも個人でも入手が可能なものとなりつつあったため、リーナス・トーバルズはこれを使ってUNIX互換の機能を持つOSを動作させてみたいと考えていた。しかし商用UNIXは高価であり、UNIXを模して実装されたMinixもまた教育的な動機から大幅に簡略化されていたために構造的ないくつもの問題を備えており、いずれもトーバルズの目的を果たすことは困難であった。このためトーバルズは自らOSカーネルの開発に着手し、既に使用していた自作のターミナルエミュレータを改造、ファイルシステムなどUNIX互換のサブシステムとAPIを作成し、GNU Projectのライブラリやtools環境などと組み合わせることでそれらのソフトウェアが使えるようにした。
登場した当初のLinuxの実装は極めて単純なものであり、既存の他のどのようなUNIXシステムに対しても、その機能と実績において比肩しうるものではなかった。しかし当時、フリーなUNIX互換OSを開発していたGNU Projectはカーネル(GNU Hurd)を完成しておらず(2006年現在もなお開発中である)、AT&TのUNIXもフリーではなく、さらにBSDはAT&Tと係争中であったために、即座に利用可能な形で提供され、スクラッチビルドであることから権利上の問題も抱えていないと考えられる、クリーンかつフリーなUNIX互換カーネルと呼ぶことができるめぼしい存在は、Linuxの他になかった。 PCでも動作する、より本格的でフリーなUNIX(ライク)環境を求める潜在的なユーザーや開発者たちの多くは、当時は教育用OSであるMinixに流れていたが、トーバルズはLinuxをMinixのメーリングリスト上で公開し、GPLライセンスの下で利用可能にすることにした。これはIntelの32bitパーソナルコンピュータでしか動作しなかったが、ちょうど32bitパーソナルコンピュータの普及期であったこと、GPLによって誰もが改良可能であったことから、フリーですぐに使用でき、より多くの機能のあるOSを求める人々からの改良を促した。”適切なときに適切な場に居合わせた”ことが、後の大幅な成長に繋がったと言える。
実際にこの時期には、他にもカリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley, UCB)のBerkeley Software Distribution(BSD)もBSD系UNIX(4.3BSD Net/2)の80386への移植・実装(386BSD、のちのFreeBSDおよびNetBSD)を開始していた。市場において、マルチプロセスやメモリ保護・仮想CPUなど、モダンな32bit OSの実装が可能となる機能を搭載したCPUを搭載した安価なパーソナルコンピュータが普及を開始し、UNIXが自らのコンピュータで動くものとなる可能性があったことが、こうした広義のPC-UNIXの開発をスタートさせた主な要因であり、Linuxもまたその現象の1つであった。
その後、Linux Kernel Mailing List (LKM) が開発に使われ、改良に参加する一般有志はそこに集まることになった。PC-UNIXの隆盛など社会的な注目が高まる中、1997年ごろより商用目的への応用が注目され、ハイエンドシステムに必要な機能が付け加えられていく。ReiserFS、ext3に代表されるジャーナリングファイルシステム、64bitファイルアクセス、非同期I/Oファイルアクセス、効率的なマルチプロセッサの利用などである。
2000年頃より、IBM、ヒューレット・パッカード、SGI、Intelなどの企業にフルタイムで雇用されたプログラマも開発に加わるようになり、開発スピードにはずみが付いた。このように、多くの人々の協力によってソフトウェアが開発されうるということは、それまでのプロプライエタリなソフトウェア開発の常識では考えられないことであり、エリック・レイモンドは、Linuxの開発を分析し、「伽藍とバザール」を著した。
2005年時点では、小~中規模のホストコンピュータ用OSとして、機能的には商用UNIXと比較しても遜色のない域に達している。主に各種ネットワーク系サーバ(ウェブサーバ、データサーバなど)の、小~中規模ネットワークにおけるサーバOSとして利用される例が一般的であり、また安価なPCやブレードサーバ等を束ねるクラスタ環境としても応用されている。
その一方で小規模な情報機器への組み込みOS環境としても普及しており、プリントサーバやストレージサーバ、ネットワークカメラやルータ等にも応用され、一部のPDAや携帯電話端末などの、小型情報端末の組み込みOSとしても普及している。
概して、一般消費者やオペレータの目に直接触れるフロントエンド環境としてよりも、インフラを担う「縁の下の力持ち」として応用される例が多い。特にパーソナルコンピュータ市場におけるデスクトップ環境としては、普及率においてWindowsの圧倒的なシェアを覆すまでにはいたっておらず、主として理工系の学生、コンピュータ業界人やその他の精通した人々が、安価なUNIX互換ワークステーションとして扱うなどの利用に止まっている。
このような事情は、フリーソフトウェアのオフィスアプリケーションであるOpenOffice.orgの登場により、徐々にであるが変化の兆しを見せているという見解もある[要出典]。例として、一部の自治体などでLinux OS + OpenOffice.orgを採用したデスクトップ(PC)を大量導入する事例が出ている。エンドユーザーが使用するデスクトップ環境としてLinuxを見た場合の弱点の一つにこうしたオフィススイート環境の未整備が挙げられるとする見解は古くからあり、これらが長足の拡充を果たしつつある今後もLinux用デスクトップ向けアプリケーションの整備が進むと仮定した場合、一気にWindowsの牙城を脅かす可能性もありうる、とされる。実際にMSはこれを憂慮しており、発展途上国向けに機能は限られるが安価なヴァージョンを販売したり、XPのサポート期間に関しても当初の2年間から大幅な延長を発表して、市場独占による高収益体質に対する批判に応えている。
日本でも近年、導入・維持コストの低さと、Windows現行版の作動しない旧式PCでも使用できる動作の軽さを買って、官公庁や自治体などで導入を検討する動きがある。これに対して、現場のPC環境変更にかかる苦労や工数、データ互換性の問題などを考慮せずに「無料だから」と安易にトップダウンで切り換える事を憂慮する意見もある。
Linuxカーネルはフリーソフトウエアとして開発が行われており、世界中のプログラマや企業により改良され、発展し、世界的に利用されるOSとなった。
現在主流となっているカーネルVersion 2.x系列におけるマスコットキャラクターは、リーナス・トーバルズの嗜好を汲んでタックス(Tux)と名付けられたペンギンが選ばれている。なお、カーネルVersion 1.xのマスコットキャラクターは鳥のカモメであった。
[編集] "Linux"の読み方
Linuxはリーヌークス、リナックス、リヌックス、リヌクス、ライナックス、リーナクス等様々な読み方をされている。開発者であるスウェーデン系フィンランド人リーナス・トーバルズ本人のスウェーデン語の名前に由来していることから、スウェーデン語の発音「リーヌークス」と表記するのが正しいとされているが、リーナス個人が英語を母語とする文化圏の出身ではないため、「どのように呼んでもらっても構わない」としている。
日本では各種の読み方が混在していたが、日本で最初のLinux専門誌LINUX JAPANが「リナックス」の読み方を採用し、一般紙が同名称に追従した事から、この読み方が一般に広まった。
[編集] Linuxディストリビューション
Linuxのカーネル自体はソースリストとして単独で公開されており、他の応用プログラム等と組み合わせてコンパイルし実行バイナリを得ることによって初めて、各種サーバやアプリケーション、ウィンドウシステム等を動作させることができる。しかしながら、このような環境をゼロから構築し維持運用してゆく作業は難解且つ煩雑なものであり、少なくともパーソナルコンピュータの一般的なエンドユーザーの知見やスキルでは実質的に不可能と言ってよい。
このため、ライブラリやシステムソフトウェア、アプリケーション等を、ソースリストの状態ではなくあらかじめコンパイルして実行バイナリとし、さらに設定の雛型などを添付した上で、tar形式のアーカイブやrpm/deb形式などのパッケージとしてまとめ、サポートスクリプトやパッケージマネージャ、インストールソフトウェア等と組み合わせた形で提供されることが多い。このようなひとまとめにされた環境を、Linuxディストリビューションと呼ぶ。
多くのLinuxディストリビューションでは、カーネル、ライブラリ、ツール環境、コマンドラインシェル、コンパイラ、テキストエディタ、X Window System、ウィンドウマネージャ、科学技術計算用ツール、その他オフィスアプリケーションソフトなど、何千ものアプリケーションパッケージを選択できるようになっている。
[編集] 特殊な利用分野
LinuxはオープンソースのOSであるため、Microsoft Windowsなどの一般的にソースの開示や参照がほぼ不可能なプロプライエタリOSと比較した場合、よりニッチな用途への対応や調整のキャパシティを広く取れることから、応用範囲はより広範であるとされる。
- 1CD Linuxでは、充分な搭載メモリ容量を確保できるPCでは、データの編集や蓄積などを要求されない参照や閲覧主体の作業であれば、そのほとんどの作業をCDからの起動で利用可能となる。一方、特殊な用途としては、X Window Systemを組み込まず、ごく短時間で起動するメディアプレーヤーシステムや、囲碁などの専用のもの等もある。
- 1FD Linuxでは、一枚のFDに(時として特殊なフォーマット形式を利用して)Linuxを組み込み、PCルーターやSambaサーバーを構築できるものなどがある。
- NASでは、NFSやSamba等によるUNIX環境やWindowsネットワークへの対応だけでなく、NetatalkによるAppleTalkへの対応を実現したものもある。また一部のNAS装置では、内部のLinuxカーネルを再構築することで、NASでありながら、ストリーミングサーバーなどの機能を追加できるものもある。
- HDDレコーダー、携帯電話端末などの組み込みシステム用OS
- スーパーコンピュータ 現在、汎用機やスーパーコンピュータ用カーネルとしてLinuxは広く採用されている。特にクラスター型HPCにおいてLinuxはかなり普及している。
[編集] ユーザーグループ
Linuxには複数のユーザーグループが存在する。国内外の Users Group
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 日本のLinux情報
- 日本リヌックス協会 (日本 Linux 協会)
- 日本リヌックス協会定款 ("Linux"の読みに関する参考)
- KNOPPIX Japanese edition
- Linux JF (Japanese FAQ) Project
- JM Project
- 2ch-Linux-Beginners
- リーナス・トーバルズ本人のスウェーデン語によるLinuxの発音(ヘルシンキ大学 ftpサーバ)
- リーナス・トーバルズ本人の英語によるLinuxの発音(ヘルシンキ大学 ftpサーバ)
- Linuxにおける興味深い議論:『ディベート:リナックスは時代遅れだ』
- Linuxの手で行なうページ
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