べてるの家
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べてるの家(Bethel's house)は、1984年に設立された北海道浦河町にある精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点で、社会福祉法人浦河べてるの家(2002法人化-小規模授産施設2箇所、共同住居12箇所、グループホーム3箇所を運営)、有限会社福祉ショップべてるなどの活動の総体である。そこで暮らす当事者達にとっては、生活共同体、働く場としての共同体、ケアの共同体という3つの性格を有している。
元々は1978年にはじまった浦河赤十字病院の精神科を利用する統合失調症等をかかえた当事者達による回復者クラブ「どんぐりの会」の活動が端緒となっており、浦河教会の旧会堂で一緒に生活をしながら、共に日高昆布の産地直送などの起業を通じた社会進出を目指すということで誕生。 「べてる」は、ヘブライ聖書創世記でヤコブが天に達する階段の幻を見て神の祝福を受けた土地に命名した「ベテル」(bethel)、すなわち「神(エル)の家(ベート)」に由来している部分がある。
北海道日高地方特産の日高昆布の通販から始め、海産物、農産物の通販などいろいろな事業を起こしている。現在では、二つの授産施設も持っている。病気が重くなったり、生活や活動に支障が出てくることを、ここでは、ごく普通のこととして捉える。それが当たり前、普通であって、驚いたり、嫌がったりしない。 あるがままをそのまま、受け入れてしまう、そんな生き方が、「べてる流」としてケアに関係する人たちから、注目を浴びるようになって、べてるの住民たちは全国各地で講演活動もしている。その模様を撮影したビデオ(「べてるの家の当事者研究」など)も販売し、これも彼らの自立生活を経済的に支える縁(よすが)になっている。
毎年、「べてるまつり」と呼ばれる催しが浦河で開催されており、「幻覚妄想大会」などユニークな企画が行われている。 当事者の社会参加を支える充実した支援プログラム、投薬の量が全国平均の3分の1、病床数の削減など、先進的な取り組みがなされており、世界中から毎年2500人以上の研究者・見学者が訪れる。
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[編集] 設立
1984年4月1日。
[編集] 名前の由来
「べてる(Bethel)」は旧約聖書・創世記に出てくる地名で、「神の家」という意味。 ドイツに古くから障害を持った人々が受け入れられ、暮らしている同名の街(ドイツ名:ベーテル)があり、第二次世界大戦中、ナチスが「優れた人間のみが生きる権利がある」との思想から、障がい者を抹殺しようとした時、住民が「彼ら・彼女らを連れて行くのならば、私たちも連れて行け」と、命懸けで抵抗した。1984年、浦河教会の牧師だった宮島利光氏がこのドイツのエピソードをもとに、「べてるの家」と命名。
[編集] ビデオ
- 「精神分裂病を生きる」(全10巻)
- 「ベリーオーディナリーピープル ~とても普通の人々~」(全7巻)
- 「べてるの家の当事者研究」(全10巻)
[編集] 文献
- 浦河べてるの家『べてるの家の「当事者研究」』医学書院 2005年
- 横川和夫『降りていく生き方 「べてるの家」が歩む、もうひとつの道』太郎次郎社 2003年
- 浦河べてるの家『べてるの家の「非」援助論 そのままでいいと思えるための25章』医学書院 2002年
- 斉藤道雄『悩む力 べてるの家の人びと』みすず書房 2002年
- 向谷地生良『「べてるの家」から吹く風』いのちのことば社 2006年
- すずきゆうこ『べてるの家はいつもぱぴぷぺぽ』McMedian 2006年
- 向谷地生良『安心して絶望できる人生』NHK出版 2006年