オピストコンタ
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オピストコンタまたは後方鞭毛生物(Opisthokonta; ギリシャ語 opistho- '後方' + kontos '鞭毛'、英語: opisthokonts)は真核生物の主要な系統の1つで、動物(後生動物)と真菌に加えて数グループの原生生物を含む。これらの生物が単系統群であることは、遺伝学および微細構造の双方の研究から強く支持されている。共有形質は、動物の精子やツボカビの胞子のような鞭毛を持った細胞が、後ろ側にある1本の鞭毛で進むことであり、これが語源になっている。対照的に、これ以外の真核生物では鞭毛を持った細胞は1本ないし複数の前方の鞭毛で進む。
[編集] 分類と系統
国際原生生物学会 (ISOP) は、Adl et al. (2005) にもとづきオピストコンタを次の4グループに分類している。
- 真菌 (Fungi)
- メソミセトゾア (Mesomycetozoa)
- コアノモナダ (Choanomonada) ≒ 襟鞭毛虫
- 後生動物 (Metazoa)
近年では、オピストコンタの系統は分子系統樹などから次のように推定されている。
- 無名の系統
- 真菌
- ヌクレアリア科 (Nucleariida) - 上の分類ではメソミセトゾアに含まれた
- ホロゾア (Holozoa)(あまり一般的な名称ではない)
- メソミセトゾア (Mesomycetozoa)
- カプサスポラ (Capsaspora) ?
- コラロキトリウム (Corallochytrium)
- イクチオスポレア (Ichthyosporea)
- 無名の系統
- 襟鞭毛虫 (Choanoflagellates) ≒ コアノモナダ
- 無名の系統
- ミニステリア (Ministeria) - 上の分類ではメソミセトゾアに含まれた
- 後生動物 (Metazoa)
- メソミセトゾア (Mesomycetozoa)
これらのうち、真菌と後生動物以外は原生生物であり、やむを得ず側系統である襟鞭毛動物門 (Choanozoa) ないしMesomycetozoaという1つの門にまとめることもある。そのほとんどは真菌よりは動物の方に近縁で、動物の起源を研究している生物学者たちから非常に注目されている。ツボカビもかつては原生生物に含めていたが、現在では菌界に含めることが多い。
[編集] 歴史
動物と真菌の近縁性は1987年にキャヴァリエ=スミス (Cavalier-Smith) によって示唆され、後に遺伝学的研究によって裏付けられた。このとき彼は非正式名としてopisthokontaを用い、正式名としてはツボカビ類に対して用いていた。初期の系統樹ではオピストコンタは植物などのクリステが平板状のミトコンドリアを持つグループの近くに置かれたが、この形質は多様である。Cavalier-Smith and Stechmannは、オピストコンタとおそらくアメーボゾアは、真核生物が進化してすぐにanterokontsないしバイコンタ (Bikonta, 英語: bikonts) と呼ばれるそれ以外の真核生物と分岐したものだと論じている。
[編集] 参考文献
- Cavalier-Smith, T. (1987). The origin of fungi and pseudofungi. In A.D.M. Rayer et al. eds. Evolutionary biology of Fungi, p. 339-353.
- Wainwright P.O. et al. (1993). Monophyletic origins of the metazoa: an evolutionary link with fungi. Science 260: 340-342.
- Stechmann, A & T Cavalier-Smith (2002). Rooting the eukaryote tree by using a derived gene fusion. Science 297: 89–91.
- Adl et al. (2005). The New Higher Level Classification of Eukaryotes with Emphasis on the Taxonomy of Protists. J. Eukaryot. Microbiol., 52(5), pp. 399–451.[1]
- Steenkamp, E. T. et al. (2005). The protistan origins of animals and fungi. Mol. Biol. Evol. 23, 93-106.[2]