カテナン
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カテナン (catenane) は、複数の環が鎖のように、共有結合を介せずにつながった分子集合体のこと。語源はギリシャ語で「鎖」を意味する "catena"。2つの輪がつながったカテナンは [2]カテナン、3つであれば [3]カテナンと呼ばれる。
最初のカテナンは1960年、ベル研究所の E・ワッサーマンによって米国化学会誌に報告された[1]。彼は、重水素でラベルした34員環のシクロアルカン(シクロテトラトリアコンタン、C34H63D5)の存在下、長鎖のジエステル (H3CCH2OC(=O)−(CH2)32−C(=O)OCH2CH3) をアシロイン縮合に付し、その生成物の中にシクロアルカン C34H63D5 以外の新しい重水素化物が微量生成していることを IR で確認した。その重水素化物はアシロインを分解する条件におくと元の C34H63D5 とジカルボン酸 (HOC(=O)−(CH2)32−C(=O)OH) を与え、すなわち、それはジエステルからできる環状アシロインがシクロアルカンと作ったカテナンであったことが分かった。
E・ワッサーマンによってなされた、このはじめての報告以降もカテナンは合成が困難であり、あまり研究は進まなかった。しかしSauvageによって金属テンプレートを用いる高効率カテナン合成法が開発され、この報告がカテナンの研究を大きく進める結果となった。今日では、この金属テンプレートを用いる超分子合成法はカテナンのみならず、ロタキサンやボロメアンの環、ノットなど種々の超分子化合物を合成するために用いられている。
カテナンに似た構造を持つ超分子としてロタキサンが挙げられる。いずれも分子シャトル、分子モーターなどの「ナノマシン」の素材として現在盛んに研究が進められている。
[編集] 参考文献
- ^ Wasserman, E. "The Preparation of Interlocking Rings: A Catenane". J. Am. Chem. Soc. 1960, 82, 4433-4. DOI: 10.1021/ja01501a082
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