カービングスキー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カービングスキーは、1990年代に開発された側面を構成する円弧(サイドカーブ)の回転半径が従来のスキー板に比べて小さい(カーブがきつい)アルペンスキー用のスキー板。スノーボードがスキー板に比べて強いサイドカーブを持っていたことをヒントに開発された。
スキー板のトップ(先頭部)とテール(後部)の幅が太く、センター(中央部)は細めに作られているため、スキー板を雪面に対して傾ける(角付けする)ことにより外力によって板がたわみ、エッジが静止時のサイドカーブよりさらに小さい円弧を描いて雪面に食い込むことで実用的なターンが実現される。おおむね、サイドカーブが R20(半径20m)未満のものがカービングスキーと分類される。カービングスキーに求められる性能を実現するためには、スキー板には上下方向にたわむ柔軟性のみではなく、前後方向を軸とする捻れに対する強さも要求されるため、スキー板の設計・製造技術がCADやCAEの導入により発展した1990年代になって初めて実現可能となった。カービングスキー登場前のアルペンスキー板のサイドカーブはR30以上となだらかな円弧を描いていたため、実用的なターンを行う場合には多くの場合はスキー板をずらして方向を変える必要があった。ずらしによる摩擦は制動が伴うため、カービングによるターンが一般的となった現代のアルペン競技、特に一般競技者のスピードアップには著しいものがある。スキー板は通常、高速で扱いたい時ほど長くして安定性を求めるが、ターン時のスピードアップに伴い以前と比べて10cm〜20cm近く板が短くなった。
元祖と言われているのは1992年にオーストリアのスキーメーカー、クナイスル社が発売した「ERGO(エルゴ)」 。本来はレーサーのトレーニング用やお遊び用のセカンドスキー的な扱いであったが、1998年頃からスラロームタイプのカービングスキーが発売されたことでシェアを拡大。現在では製造されているスキー板のほとんどがこのカービングスキーであり、テニスラケットやゴルフクラブのような用具の進化による技術の大幅な変化が起こっている。
[編集] ファットスキー
通常のカービングスキーよりもセンターを幅広にしたものをファットスキーと呼ぶ。センターを幅広にすると浮力が増し、オフピステ(非圧雪)の上を滑りやすくなる。旧来よりヘリスキー用として存在していたが、当時の(カービング普及以前の細い)スキーの主流であった緩いサイドカーブと、深雪での用途に限られた幅広のシェイプゆえに日本に輸入される数はごく少数だった。その後カービングスキーの普及に伴いその技術がフィードバックされ、深雪のみならずあらゆる斜面での汎用性が注目され、現在ではメーカーの主要カテゴリーの一つとして定着する。 山岳スキーなどではこのファットスキーを使う愛好家も多い。逆にセンターが極端に幅狭な場合、斜面でのエッジの効きが悪くなりトラバースするときなどに滑落の危険がある。