ガンマナイフ
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ガンマナイフとは定位放射線治療を行う放射線照射装置の一つである。転移性脳腫瘍、脳血管の奇形などの治療に使われる。
この装置の特徴は201個のコバルト60の線源をヘルメットのような形状に並べ、これらの線源を精密にコントロールし、病変部にピンポイントでガンマ線を集中照射(精度は0.2~0.5mmくらい)することにある。個々の線源からのガンマ線は細く弱いが、それぞれを病変部分に向け照射するので、病変部に対しては大きな線量となり、効果を上げることができる。病変部分以外については、細く弱いガンマ線が貫通するだけであるので、副作用は最小限に抑えられる。
ガンマナイフ以外の定位照射装置として、汎用放射線治療機であるリニアックの照射口にコーンを装着し、微細ビームを作り、多門もしくは回転照射を行う方法「リニアックナイフ」がある。線量の集中性・精度はガンマナイフとほぼ同等である。さらに、ガンマナイフやリニアックナイフで対応が困難であった、不正形腫瘍の形状に対応するため数mm幅のマイクロマルチリーフで回転運動原体照射を行う装置も実地診療で導入されている。
健康保険が適用できる。定位照射の診療報酬点数は他の放射線治療点数(平均1回1万2千円)に比べ、きわめて高額な63万円である。ガンマナイフは50万円に引き下げられた。リニアックナイフとの診療報酬点数の差は、ガンマナイフが多発脳転移症例などに乱用された経緯による。高額療養費制度の申請を行なえば、後日、1ヶ月の限度額以上の自己負担額は返還される。
【ガンマナイフの問題点】
ガンマナイフは主に民間病院脳外科に導入され、日本の放射線治療の中で特異な位置づけとなっている。この主因は導入時の保険点数が極めて高額であったためである。これは脳外科が主導し、脳手術に準じた高額保険点数が政治力により採用されたためである。低額の保険点数に苦しみ赤字診療が常識であった放射線治療施設は公的施設以外ではほとんどないが、ガンマナイフは病院にとって非常に利益率の高い治療となったため、通常の放射線治療経験のない小規模民間病院に多数導入された。 このため採算性を早期から問われることとなり、日本放射線腫瘍学会の転移性脳腫瘍の定位照射の適応ガイドライン「3cm未満の腫瘍。3~4ヶまで」は全く無視されている。現在、ガンマナイフの治療症例の半数以上は多発脳転移例であり、諸外国における良性腫瘍に対するガンマナイフ治療率のそれと比べるときわめて高くなっている。
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