ジャアファル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジャアファル(766年? - 803年)は、宰相ヤフヤー・イブン=ハーリドの次男。
父ヤフヤーと兄ファドルと共に、アッバース朝第5代目カリフ、ハールーン・アッ=ラシードに仕えた。
兄ファドルはハールーンの乳兄弟で、ハールーンの母ハイズラーンと、ハールーンの乳母の、ファドルとジャアファルの母とは非常に親しかったらしい。その人柄は謹厳実直な兄のファドルとは異なり、闊達で洒脱で機知に富み、そのうえ容姿も眉目秀麗で、ハールーンとは寝食を共にする程、親しかったという。
ハールーンは後に妹のアッバーサを、彼に嫁がせたぐらいである。
803年の初頭のある日、ハールーンとジャアファルは共に狩に出かけ、夕方に帰還した。ふだんならば、ジャアファルと楽しく会食をするはずだったが、その日に限り、ハールーンは一人にして欲しいと言い、ジャアファルと侍医達を宿舎に帰らせた。
それからしばらくした後、首斬り役を務めるマスルールを呼び、ジャアファルを連行してこいと命令した。そして引き立てられてきたジャアファルを斬首させてしまった。
ジャアファルの遺体は、バグダッドのチグリス川の船橋で十字架にくくりつけられ、二年間もさらされる事になった。父のヤフヤーと兄のファドルも投獄された。
バルマク一門は財産を没収された上、実に老若男女含め1200人もが、虐殺されたという。
その中にはハールーンの妹で、ジャアファルの妻のアッバーサも含まれていたという。
そしてヤフヤーは投獄されて二年後に獄死し、ファドルも三年後に死んでいる。
この凄まじいバルマク一門粛清の理由については、バルマク家の勢力があまりにも強くなり過ぎたからだという説もあるが、明確な理由は定かではない。このバルマク家の悲劇は『千夜一夜物語』にも、記されている。