スラローム (オートバイ)
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スラローム(Slalom)とはジグザグに蛇行する、教習所における二輪技能教習において走行課題の一つ、また競技走行におけるポイントの一つ、そしてかつて暴走族が路上で行っていた無謀運転の一つである。
[編集] 技能教習におけるスラローム
バランス走行の一つとされ、乗車姿勢、重心移動、バンク、アクセルワークを習得する為の走行課題である。連続進路転換とも呼ばれる。設置されたパイロンの間を規定時間以内にジグザグに走りぬける事が求められる(以前はパイロン列の両側にパイロン列と平行な線が引かれ、それらの線からはみ出さないように走行する課題だったが、本質は同じである)。教習所によっては、リアブレーキでリアホイールをロックさせ、不足した進入角を補う方法も教えている所もある(e.g. 津田沼自動車学校)。またスロットルの開閉ではなくクラッチの断続によって走行する方法を教えている所もあり地域性が見られる(トルクが低い車体ではエンジン回転数を高めに保ち、半クラッチを使う事で必要とされる駆動力を得る走行方法もあり、一概に両者に良し悪しをつけるのは難しい)。公道においてジグザグ走行は危険行為であり本質ではない。スラロームにおいて習得すべき事は前述の操縦に必要な技能を総合して実現することにより旋回時におけるバランスの取れた走行方法の会得である。
アクセルを絞ると重心方向へバイクは倒れる。これにより旋回が始まりステアリングが切れる。そして旋回中盤でアクセルをあけるとバイクは立ち上がろうとする。そして再びアクセルを絞るとバイクは反対側へと倒れる。これをリズミカルに行う事により連続したパイロンの間をジグザグに走り抜ける。視点は目前のパイロンよりも遠くに置くと良い。パイロンに接近しすぎた場合には、リアブレーキを踏むことでリアタイヤが進行方向へ滑り、パイロンとの距離を拡大する方向に車体の姿勢を変える事が出来るが、度が過ぎるとそのまま転倒してパイロンをなぎ倒す事になるので注意が必要である。
オートマチック限定免許の技能教習においてもスラローム走行は課題の一つとされている。オートマチックトランスミッションは遠心クラッチと変速機構の性質から、クラッチを繋げたままギアを固定して走れるマニュアルトランスミッションの車体で行うよりも難しく、一本橋(平均台)と並んで難関の一つとなっている。
[編集] 競技におけるスラローム
ジムカーナ等において、障害物としてパイロンを設置し、そこをジグザグに走り抜ける。基本的には、技能教習と同じであり最小の時間で走り抜ける。異なる点は、速度であり、技能教習では比較的低速である為、ハンドルを無理にこじったり、リアブレーキを使って姿勢を立て直す事もできるが、競技においては速度があるためそれらは良い方向には働かない。アクセルワークとバンク角を適切に制御し、車体が持つ復元力によって素早く切り返せる事が求められる。
[編集] 暴走行為におけるスラローム
蛇行運転とも言われ、危険行為の一つとされる。かつて暴走族は公道においてジグザグ走行する事により技量を自慢していた時代があったが、車体に加える改造の傾向が変わったこと、暴走族の運転技術レベルが低下したこともあり、近年においてはあまり見られなくなった。
首都高速道路においては、車間を縫ってジグザグ走行する行為を慎む様促す標識が設けられている。この場合のジグザグ走行はスラロームのそれを指すのではなく、車間を縫って走る行為に対する危険性を警告しているものである。