スリップストリーム
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スリップストリーム(slip stream)とは、高速走行する自動車の直後に発生する現象のこと。もしくはその現象を利用し直前を走行する車を抜き去る際に用いられるテクニックのこと。ドラフト(ドラフティング)とも言われる。
[編集] 解説
走行中の車は、空気による抵抗力を常に受ける事になる。低速域ではこの影響はほぼ見られないが、時速100kmを超えるような高速走行時には、この空気抵抗により車の持つ本来の加速性能が充分に発揮されず、加速が鈍ってしまう。その状態の時、車の真後ろ近辺では前方で空気を押しのけた分気圧が下がっており、空気の渦が発生し周りの空気や物体などを吸い寄せる効果を生むほか、空気抵抗も通常より緩和した状態となっている。この現象をスリップストリームと言う。
このスリップストリームの中に車が入る(前車の真後ろに張り付く)事により、気圧低下による吸い寄せ効果や空気抵抗緩和によるボディ全体に掛かる抵抗力の低減、エンジンの負荷軽減などの効果が生まれ、走行中の速度域では通常得られない加速力を手に入れる事が可能になる。そこから前車を抜き去る際にはスリップストリームから脱出する事になるのだが、この脱出の際に普段の空気抵抗を直に受けてしまうことになり、加速力も鈍ってしまう。しかし、スリップストリームに入っている状態の勢いを保持したまま脱出すれば、しばらくは車に掛かる空気抵抗以上の速度を維持する事ができ、前車を抜き去る事ができるのである。その他、エンジンへの負荷軽減により燃費を改善させるといった利点もある。
しかしながら、スリップストリームに入る事で車に当たる空気の量が減少してしまうために、ラジエターなどの冷却装置の性能が低下するほか、エアロパーツなどの空力部品の性能も満足に発揮されずダウンフォースも低下するなどの欠点もある。このため、スリップストリームに入るポイントは、ある程度絞る必要性がある。
スリップストリーム走行は、する側が相当な距離まで接近しないとその効果が現れにくい。レース走行等のように、する側される側の双方がある種の信頼関係の下で行うものであり、誰が運転しているかもわからない一般路上で行うものでは決してない。
自転車競技では特に重要なテクニックであるが、その場合ドラフティングと呼ばれることの方が多い。トライアスロンでは禁止されている。
[編集] テレビゲーム
マリオカートシリーズや爆走デコトラ伝説シリーズでも、この原理が利用されている。