セルトラリン
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(1S)-cis-4-(3,4-dichlorophenyl)- 1,2,3,4-tetrahydro-N-methyl- 1-naphthalenamine hydrochloride |
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CAS分類番号 79617-96-2 |
ATCコード N06AB06 |
化学式 | C17H17NCl2·HCl |
分子量 | 342.7g/mol |
生物学的利用能 | 95% |
代謝 | N-脱メチル化 (肝臓) |
体内半減期 | ~26時間 |
排泄 | 尿 |
妊娠安全性分類 (薬学的) | C |
法的状態 | 要指示医薬品(アメリカ) |
薬物形態 | 経口 25, 50, 100 mg錠 |
セルトラリン(sertraline)は選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)タイプの経口抗うつ剤である。うつ病、不安障害の治療にも使用される。サートラリンともいう。
塩酸セルトラリン(sertraline hydrochloride)としてゾロフト(Zoloft)の商品名でファイザー(Pfizer)より販売されている。日本においては、ジェイゾロフトとの商標で2006年7月7日より処方が開始された。なおアメリカ連邦食品医薬品局は1991年に承認している。
セルトラリンは強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、パニック障害、躁うつ病にも用いられる。
セルトラリンはファイザーにより生産され、小型緑色の25mg錠、青色50mg錠、または淡黄色100mg錠で流通している。セルトラリンは無臭、白色でやや水に溶ける結晶である。最低有用投与量は50mg/日で、それ以下の量でもなんらかの効果が期待できることがある。50mgで十分な効果が感じられない患者に対しては、最大200mg/日まで投与量を増加させる事が可能である。
しかし、日本においては初期投与量25mg/日 最大100mg/日と規定されている。また、新薬扱いのため、最長14日分までしか処方されない。塩酸セルトラリンに限らず、抗うつ剤は一般的にいって、一定量を超えて摂取しないと全く効果がないことが多々あり、厚生労働省のこの処置には疑問が残る。
セルトラリンには多様な副作用、例えば不眠症、胃腸障害、振戦、混乱、無気力、めまいなどがある。また患者の0.5%に躁病や軽躁病を誘発することがありうる。セルトラリンの一つの性質は軽いドパミンの再吸収阻害効果である。モノアミン酸化酵素阻害剤療法や電気ショック療法を受けている者にはセルトラリンは禁忌である。
2003年6月、イギリスは自殺増加への関与があるとする研究が発表された後に18歳以下の者に対する投与を禁止した。似たような懸念はアメリカにもあり、フルオキセチンのみがFDAより正式に未成年者用として認可されている。
2005年7月、アメリカ食品医薬品局はSSRIの投与開始直後には年齢にかかわらず自殺の危険性が増大するとして勧告を発した。
本剤は肝臓で代謝されるため、肝障害は体内から本剤の排出に影響を与えることがある。肝機能に障害を持つ者への投与は、より少ない量を投与するか、頻度を減らすべきである。同様に、患者はセルトラリンや他の抗うつ剤の服用中にはアルコールの摂取量を制限すべきである。これはセルトラリンとアルコールが(患者が服用している他の薬品と共に)肝臓に与える負荷を倍増させるためであり、アルコールは血流に長時間残留することから、セルトラリンや他の抗うつ剤を服用している患者はより早く酩酊する。さらに、アルコールはうつ状態を促進させるため、アルコールの乱用は歓迎されない。セルトラリンを服用している患者の目安制限量は1日2杯までである。
ゾロフトの特許は2005年の12月に有効期限を迎える。
ゾロフトのジェネリック医薬品としては「サーリフト」「アポサートラリン」などがあり、合法的に海外から個人輸入することができる。価格は100mg100錠で\9,000.-から\15,000.-程度である。 ただし、精神科医の指導なしに服用することはきわめて危険である。