ノルム (体論)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
体論において、ノルム (norm) は、体の拡大(とくにガロア拡大などの代数拡大)に付随して現れる写像の一種で、拡大体の元をもとの体の元に移す性質を持つ。
目次 |
[編集] 定義
体の有限次元拡大 L / K に対し、L の元 α のノルム NL/K(α) は以下のように定義される。
K の L を含む代数閉包 K^ を固定し、σi: L → K^ (1 ≤ i ≤ n) を K の元を固定する同型の全体とするとき
[編集] 例
L を複素数体 C, K を実数体 R とすると、R の代数閉包は C であり、R を固定する C の自己同型は恒等写像と複素共役をとる写像の 2 つであるから、任意の複素数 α = a + ibに対して
が拡大 C / R に関する α のノルムである。
[編集] 性質
- 拡大 L / K について、L の任意の元 α に対し、NL/K(α) は K の元になる。
- 拡大 L / K と L の元 α, β に対し
- 拡大の列 L / M / K と L の元 α に対し
- ヒルベルトの定理 90: 体の拡大 L / K が有限次巡回拡大でそのガロア群が σ で生成されるとき、以下の 2 つの条件が同値である。
- NL/K(α) = 1.
- α = β / σ(β) を満たす L の元 β が存在する。
[編集] 一般化
有限群 G と G 上の加群 M に対して、写像
を G-加群 M のノルム写像という。x の "ノルム"
は G の作用に対して不変である。すなわち、M の G-不変な元全体のなす部分加群を MG とあらわすと Im(NG) ⊂ MG が成り立つ。
ガロア拡大 L / K に対して、乗法群 L* をガロア群 G = Gal(L / K) 上の加群と見なすとノルム写像 NG は拡大のノルム NL/K となる。
[編集] 関連項目
- トレース (体論)
カテゴリ: 数学関連のスタブ項目 | 体論 | 数論 | 数学に関する記事