ヘンリー・セルマーパリ
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ヘンリー・セルマー・パリ(Henri Selmer Paris、ヘンリ・セルマー・パリ)は、1858年に生まれたヘンリ・セルマーが1885年に創業を始めたフランスの楽器メーカーである。サクソフォーンやクラリネット、トランペット、トロンボーンなどを製造、販売し特にサクソフォーンの評価は世界的に高い。
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[編集] 歴史
1885年、フランスのクラリネット奏者であったヘンリ・セルマーは、クラリネットのマウスピースやリードの製作を始め、パリに店を開いた。1898年からクラリネットを作り始め、著名なアーティストたちから評価を得た。同年、ヘンリ・セルマーの弟でボストン交響楽団などでクラリネット奏者をしていたアレクサンドル・セルマーが、兄の楽器などをアメリカで販売するためニューヨークに店を開き、1904年にセルマーU.S.A(Selmer-U.S.A 、後にセルマー(The Selmer Company) 、現在のコーン・セルマー(Conn-Selmer Company))を設立した。1921年12月31日に、セルマー・パリ初のサクソフォーンを完成させた。1989年頃バスサクソフォーンからソプラニーノサクソ フォーンまで全種類をラインアップ。
[編集] セルマーの楽器
[編集] サクソフォーン
- モデル22 1921完成後、1922年より発売開始。ロット番号44++位まで
- モデル26 ロット番号44++~119++位まで 1926年発売。
- シガーカッター CIGAR CUTTER 119++~185++位まで。1930年発売
オクターブキーのメカニズム構造が、紙巻タバコを切るシガーカッターに似ているのでその名前がつけられているモデル。やや他のメーカーに比べて後発であり、先行していたCONNやKINGに対し、絶対的な構造の差異などがなかったが、このモデルから少しずつオリジナリティーを発揮し始める。1930年当時は全てインラインのキー配置で、音質などにもメーカー事に違いはほとんど感じられなかったと言う。このモデルでその名の由来となったメカニズム構造を変更し、独自の音質を作ったセルマーは次第にサックス業界をリードしていくことになる。
- ラジオインプルーブド RADIO IMPROVED 18+++から21+++位まで 1934年発売
シガーカッターのマイナーチェンジ。管体の厚みがより薄くなっている。
- バランスドアクション ロット番号19+++~35+++ 1936年~1947年
セルマーが世界的に有名になるきっかけとなった。テーブルキーなどの配置を見直し、操作性が大幅に向上。若干数ではあるがアメセルも存在
- スーパーバランスドアクション ロット番号35+++~558++ 1947年~53年
バランスドアクションで好評だったテーブルキーなどを更に改良。ここで初めてインラインから現在の主流であるオフセットに変更された。音量こそ低いものの、キー配置の変更により構造をより薄く出来るようになり、音質が飛躍的に向上。アメリカでノックダウン方式により本格的にアメセルも発売開始。
- マーク6 ロット番号558++~23++++ 1954年~74年
セルマー社を世界のトップサクソフォンメーカーに押し上げた歴史的モデル。現代レベルで見ても完成度が非常に高くプロ奏者がこぞって使用し、その名声を不動の物にした。フランスで製造されたものと、アメリカで組み立てられた、いわゆるアメセルが存在する。フランス製は、音抜けが良くなるまでに時間がかかり、まともな音が出るには毎日吹いても5-8年はかかるとまで言われたが、音抜けのよくなった管体は非常に音質が高い。細かなマイナーチェンジなどはあるが、実に20年にもわたり販売された稀有なモデル。現在のリファレンスやスターリングシルバーでもこのモデルの音質は再現できないと言われる。アメセルは、ジャズに向いたチューニングがされている。
- マーク7 1974年~80年
工場製手工業で製造された最後のモデル。ハンドメイドならではの深い音質と製造技術向上の恩恵を受けるはずだったが、日本製サクソフォーンに押され、その真価を発揮できなかった悲劇のモデル。マーク6の良い所とコンサートなどでの使用を前提とした音量の増大が計られたが、コストの問題からやや中途半端な出来になってしまった。だがしかし、それは前モデルであったMARK6と比較しての事であり、金額的な差を踏まえたうえで、サクソフォーン単体としてみた場合、初心者にでも扱いやすく、粘り強い音や、強く吹き込んでも音域が安定しているなど美点は多い。 最前期を除いて工場ラインでの生産に移行。
- スーパーアクション80(通称:シリーズ1)1981年~90年
日本製サクソフォーンに対抗するために生産ラインの集中化や彫刻の簡素化などを行ったモデル。コスト面での制約が反映し、個体差が大きい。 価格面での対抗を踏まえ、この頃より上級者モデルとしてリファレンスを製造し始める。
- スーパーアクション80 シリーズ2 (Super Action 80 Serie2)1990年~
現行モデル。SA80のマイナーチェンジモデル。ネックなどの部分がより初心者でも吹きやすいように改良。実際は競争力強化の為、楽器としての精度よりコストパフォーマンス を重視してしまうと言った傾向があった。シリーズ1と比較しても殆ど変更点が見られない。楽器と言うより工業製品の様な雰囲気である。なお、シリーズ2はソプラニーノサックスからバスサックスまでのフルレンジをカバーしている。
- シリーズ3 (Serie 3)1996年~
現行モデル。SA80シリーズがやや不評であった為、その反省と現代レベルでの製造技術を駆使して再設計された。初心者でもとても扱いやすく懐が深いので、永く愛用できるモデルと言える。しかし、管体を薄く、軽くするなどの変更は、一定の経験者から、シリーズ2に比べ音が貧弱になったという声も聞かれ、シリーズ2はそのまま製造が続けられている。尚、ソプラノはこのモデルから、デタッチャブルネックが採用された。また、アルトはソプラノ・テナーより後発であるため、今までのモデルのようにアルト・テナーのメカデザインの共通化が、為されていないところもいくつかある。2000年には、アルトでミレニアムモデルが、2000本限定で販売された。現在は、スターリングシルバー製のモデルもラインナップされ、様々な奏者から好評を得ている。
- リファレンス (Reference)
マーク7の生産終了後、アメセルの生産ラインを廃止し、代わりに上級者やプロ奏者向けのモデルとして製造を開始。 SA80シリーズ1以降、初心者から上級者まで幅広い顧客獲得を狙ったが、上級者にはあまり受け入れられなかった為に、価格と引き換えに音質を追及して製造された。 本来真鍮の管体を純銀を使用して製造されたスターリングシルバー、メッキを金やプラチナで塗装したゴールドプレート、プラチナプレートなども特別モデルとしてラインナップされる。
- リファレンス (Reference)2000年~
現行モデル。クラシック、吹奏楽界では、一定の評価を得てきたスーパーアクション80シリーズであったが、ジャズ系奏者は未だにアメセルのオールド楽器を好む傾向があった。従って、セルマーは、シリーズ3で管体の軽量化などで、ジャズ系の奏者の取り込みを狙ったが、うまくいかなかった。そこで、急遽、シリーズ2・3をベースに、過去の名器と呼ばれるモデルを参考にしながら設計された。テナーは2つのモデルがあり、仕上げと彫刻以外は同等であるが、リファレンス36がスーパーバランスドアクション、リファレンス54がマーク6が参考と公表されている。2003年にはアルトが追加され、モデルはリファレンスのみであり(本国ではRefarence54と呼ばれ、仕上げも2種類ある)、マーク6が参考とされている。近年オールドサックスの価格の高騰が顕著であり、また状態も様々であるため、ジャズ入門者は製品として一定水準にあるこれらのモデルを選択することも多くなってきている。
2005年よりチャーリー・パーカー没後50年ということで、5年間、毎年限定モデルが”tribute to bird”として販売される。内容は、パーカーの愛称バードより、1年に1つの大陸を代表する鳥をモチーフにした彫刻が管体になされる。彫刻・仕上げ・限定数の違いによって、コレクターエディション・レギュラーエディションと分けられ、価格も大きく異なる。2005年はアメリカ大陸より、ハミングバード(ハチドリ)が選択され、アルトのコレクターエディションが220本、レギュラーエディションが1000本製造された。2006年はオーストらリア大陸より、クッカバラ(ワライカワセミ)が選択され、アルトではコレクターエディション・レギュラーエディション、テナーではリファレンス54から、コレクターエディションが販売されている。
- サクソフォンマウスピース
近年ジャズ奏者から、セルマーのオールドマウスピースが注目されてきている。セルマーもそれを意識した製品をラインナップしている。
- フルート
- クラリネット
- オーボエ
- トランペット
[編集] 内部リンク
セルマー (セルマーUSA)