ランダム・ウォーク理論
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ランダム・ウォーク理論 (Random Walk Theory ) とは、株価の値動きについての「予測の不可能性」を説明する理論。
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[編集] 概要
株価の値動きは、どの時点においても「上昇と下降の可能性」がほぼ同じにあり、独立した事象であるから、過去のトレンドやデータによって、値動きを予測することは不可能である…とする理論である。
テクニカル投資家からは、「上昇(下降)トレンドでは、上昇・下降の可能性は同じではない」との反論もあるだろうが、それは結果が出てからの問題である。また、長期的な「幅の広い波」や、突発的な「ランダムな波」についても、注目すべきだろう。
海の波に例えると、この事がよく分かる。元々の波は、どれも「ほとんど同じ強さ」であるとする。しかし、様々な方向からの波が発生し、間隔の広い波、狭い波が重なりあい、それにより「非常に大きな波」が生まれるのである。逆に、波同士が打ち消しあい、波のない状態も起こりうる。それらを予測するのは、決して不可能ではないが、我々には非常に困難である。
しかも突然ここに、隕石が墜落したり、台風が出現したり、南極の氷が解けたり、さらに人間が海岸の形を変えることもあるのである。世界の裏側で、小石により発生した小さな波が、「バタフライ効果」により、大きな影響を及ぼす可能性さえもある。
これらを正確に予測することは、まず不可能であろう。トレードでの値動きも、ほぼ同じことが言える。さらにトレードの場合は、そこに投資家たちの心理が加わることで、さらに複雑な結果を生むのである。
[編集] 猿のダーツ投げ
この理論では、テクニカル分析の予測には、ほとんど科学的根拠がないとしている。
目隠しをしたサルに、新聞の相場欄めがけてダーツを投げさせ、命中した銘柄でポートフォリオを組んでも、専門家が選んだポートフォリオと、さほど大差のない運用成果をあげられる…と、この理論では説明している。
さらに、ダーツ投げで「売買タイミング」を適当に決めても、運用結果はさして変わらない…とも言うことができる。場合によっては、ダーツ投げで決めたほうが、人間の心情が入り込まない分、利益が生まれやすいとも考えられる。
それほど人間の心情は、投資においてマイナスに働いている。これは、俗にいう「自動売買ソフト カブロボ」での売買でも、同じことが言われている。
[編集] 織り込み
この理論において強い根拠になるのは、「相場を変動させうる情報は、瞬時にマーケットに広がる」という理論である。
つまり、これから企業の業績が良くなりそうだ、という「蓋然性の高い情報」などが流れると、瞬時に一般に広がり、皆がその情報に従って投資行動を行うため、すぐに価格に織り込まれてしまう…という事である。
水面に小石を投げ入れると、すぐさま波動が伝わっていく様を思い浮かべると、理解しやすいだろう。しかし、トレードにおいて小石を投げ入れるのは、波のある海なのである。波動の軌跡はすぐに消え去り、すぐに元のランダムな波に戻ってしまう。
普通のニュースでは、一時的な上昇・下降のトレンドを示すかもしれないが、すぐにランダムで予測不可能な動きに戻るのである。隕石レベルのサプライズであれば、津波レベルの値動きを引き起こす事もありえるだろう。