三瓶小豆原埋没林
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三瓶小豆原埋没林(さんべあずきはらまいぼつりん)は三瓶火山の活動によって地下に埋積された森林。 島根県大田市三瓶町にあり、現地は「三瓶小豆原埋没林公園」として、地下展示棟で公開されている。また、国の天然記念物に指定されている。
直径1mを超えるスギを中心とする巨木が、生育時のままで地下に林立している。高さ10mを超える幹が直立状態で残存しており、世界的にも例がない規模の埋没林である。また、直立する幹の根元には、流木群が存在する。
この埋没林では、根を張って直立する埋没樹が約30本、流木はおびただしい数が確認されている。その樹種構成は、スギが圧倒的多数を占め、トチノキ、ケヤキ、カシの仲間、ニレの仲間などの広葉樹が少数認められる。 三瓶小豆原埋没林の標高は約200mであるが、現在の中国山地ではこの標高にスギの自然林はみられず、植生学的に注目される。
埋没林の発見は、1983年のほ場整備で2本の直立した埋没樹が出現したことがきっかけとなった。 後に、その時の写真をみた地元の火山学者・松井整司氏が学術的価値を指摘した。1998年に島根県が発掘調査を行ない、多数の埋没立木が存在する埋没林であることが確認された。
三瓶小豆原埋没林は、暦年代で約4000年前(放射性炭素年代で3500〜3700年前の測定値)の三瓶火山の活動によって形成された。 火山活動に伴って発生した岩屑なだれの末端が泥流となって流れ込み、巨木林を一気に埋積し、さらに、下流側のせき止めでダム化した谷に火砕物の二次堆積物が堆積することで、長大な幹が成育時のままの状態で埋積されたものである。(中村唯史)