世界遊戯法大全
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『世界遊戯法大全』(せかいゆうぎほうたいぜん)は、古今東西の様々な "遊び"、"遊戯"、"ゲーム" について、その遊び方やルールを詳細に紹介した明治時代の書籍である。
- 以下、多くは本来旧字体の漢字で書かれるべき部分を多く含みますが、一旦現代の表記で書くことにします。
目次 |
[編集] 書誌情報
- 『世界遊戯法大全』
- 編者:松浦政泰
- 出版社:博文館
- 印刷年月日:明治40年12月19日
- 発行年月日:明治40年12月23日
- 定価:一円四十銭
- 同、復刻版
- 編者:(同上)
- 解説・監修:秦芳江
- 出版社:本邦書籍(株)
- 発行年月日:昭和59年11月10日
- 定価:3900円
[編集] 概要
本書に選択・収載された遊戯の数は目次に従うなら800を超え、明治の時代に遊ばれていた遊戯がどのようであったか、また現代の遊戯の原点がどのようであったかをうかがい知る上で貴重な資料となっている。
もっともその中には「紙細工」などの一人遊び(?)から「バナゝを瓶に入れる方法」や道ゆく犬の色を当てる「犬数へ」、罰ゲームリスト、などのたいへん他愛のない遊びまでもが数に含まれており、また百人一首の「早取法」や紙切りにおける「楕円の切方」など遊戯そのものと言うより工夫や攻略法の一種のようなものまでが1項目を与えられていて、収載されている遊びの質と量について大きなばらつきを感じさせる一方で、昔から同じような遊びや余興や考え方が大衆に好まれていたことをしのばせ、当時の風俗・教養をうかがい知るよすがともなっている。
それぞれの遊びの解説は、単に東洋西洋の遊びのリストアップにとどまらずたいへん具体的で、そのほとんどはすぐにも遊び始めることができるレベルに到っている。おそらく当時の読者にとっては非常に身近な遊びや楽しみの手法ばかりであり、そしてその一つ一つに編者松浦の解釈や例示やユーモアに満ちた解説が豊富に付けられた、まさに遊びの集大成本であると言える。
[編集] 内容
内訳は大きく以下の5篇に分けられ、主に室内遊戯を採り上げた内容になっている。
- 第一篇 単独遊戯
- 第二篇 相対遊戯
- 第三篇 団欒遊戯
- 第四篇 団体遊戯
- 第五篇 余興遊戯
松浦はさらに続く3篇「戸外遊戯」「季節遊戯」「英語遊戯」を合わせて再度刊行する意気込みがあったようだが、これは実現しなかった。復刻版の解説者の秦はこの理由を、この種の書籍としては一円四十銭という価格は非常に高価で、あまり流布しなかったためかも知れない、と推測している。
日本国内だけでなく西洋の遊びの紹介も数多く、リバーシ、モリス、フォックスアンドヘンズなど定番の古典ゲーム(しかし当時は「目下欧米の遊戯界の流行物」:本書中「レヴァルシー」=リバーシの項の本文より抜粋)等にも触れられている。また、ポーカー、「そうですか」(=ダウト)、ハート、ナポレオン、「お婆抜き」などトランプの基本の遊びについての記載、等も見られる。
これらが、例えばボードゲームであれば盤面遊びとして双六と並んで紹介されている点、またその双六も当時はポピュラーだった和双六で、かつ西洋のバックギャモンに当たることにも言及してあえて一緒に並べている点などが、編者の収集眼の的確さと造詣の深さを物語っている。
一方ではフォックスアンドヘンズ(または本書中のように「狐と鵞鳥」)の解説に見られる「十六むさし」など、日本国内で本当の意味でよく知られていた類の遊びについては却って言及が少ないようで、当時の「日本の遊び」の全てを網羅していると考えるのは早計と思われる。また、当時の子どもの多くは戸外で遊ぶ機会が多かったはずで、それらの遊戯についての紹介が未刊に終わったことは、今日の研究者の視点からはたいへん惜しまれることである。