人工降雨
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人工降雨(じんこうこうう、Rainmaking)とは、人工的に雨を降らす事、また、その雨を言う。降った雨は人工雨(artificial rain)ともいう。
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[編集] 原理
人工降雨はアメリカの物理学者・化学者アーヴィング=ラングミューア博士の創案によるもので、1946年に初の実験が行なわれている。
[編集] 雨の生成
雨は、熱帯地方では例外もあるが、通常は氷点下15℃以下の低温の雲の中で発生した氷晶が昇華核となって周囲の水蒸気を吸収して雪片となり、雲中を落下して成長しながら、暖候期には途中で溶けて雨粒となって降る。寒候期でも、気温が高いと溶けて雨になる。いずれにしても、雨を降らせるには雲の中に氷の粒を作ってやる必要がある。その氷晶を作るのは空気中に浮かぶ微小な粒子で、主に海の波しぶきで吹き上げられた塩の核であり、他に陸上から生じた砂塵などの粒子もある。それらの周りに、雲の中の水蒸気が昇華と低温の影響で氷となって付き、初めに述べたように成長して雪片となるのである。
[編集] 人工降雨の方法
雨ができるには以上のように、核になる粒子と低温の雲が必要であるが、ある程度発達した積雲や層積雲の上部では温度は0℃以下になっているものの、氷点下15℃くらいになるまでは、過冷却と言ってまだ水滴のままであり、雪片の形成に至らず、雨は降らない。そこへ、強制的に雪片を作るような物質を散布してやれば雨を降らせる可能性ができるわけで、これが人工降雨の考えである。
その材料として、ドライアイスやヨウ化銀が用いられる。ドライアイスを飛行機から雲に散布する事で温度を下げ、またドライアイスの粒を核として氷晶を発生・成長させる。またヨウ化銀の場合は、その粒子が六方晶形と言って氷や雪の結晶によく似ているため、雪片を成長させやすい性質がある。
散布の方法としては、飛行機を用いる他、ロケットや大砲による打ち上げもある。ヨウ化銀の場合は、地上に設置した発煙炉から煙状にして雲に到達させる方法もある。
[編集] 目的
水不足や旱魃などの対策が最も一般的で、世界各地で実施されており、日本でも、1964年夏にに東京を中心とする関東地方で記録的な水不足が起きた際、水源地付近で実施された事が知られている。他に、大きなイベント当日の好天を狙って事前に雨を降らせたり、エアコンの電力消費を抑えるため、又は黄砂による大気中の砂塵除去のためというものもある。
[編集] 人工降雨の限界
すでに述べた通り、人工降雨はある程度発達した雨雲がある場合に有効であり、かつ成功するもので、雲の無い所に雨雲を作って雨を降らせるのは不可能である。またその雨量も、本来の雨量を1割程度増加させるくらいで、自由に降水量を制御できるまでには至っていない。
[編集] 備考
室内での作物の栽培実験や自然斜面の崩壊実験などで、人工降雨発生装置などを使用して雨を降らせる場合にも言う。
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