刀工
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刀工(とうこう)とは、日本刀を造ることを本職とする人。
日本刀を作るには数段階あり、それぞれの段階の職人がいる。
- 鉱山師 - 鉱物を掘り出す
- 鉄穴師(カンナジ)- 砂鉄を採集し砂と分ける
- タタラ師 - たたら吹きの一種たたら製鉄し砂鉄を溶かす
- 山子 - 炉の火のための炭を焼く
- 刀鍛冶 - 鉄を製品に加工する(ここでは、鉄の塊を鍛造(鍛えて)日本刀にする)
- 鞘師 - 刀にあわせて、鞘を作る
- 研師 - できあがった刀を研ぐ
広義には上記全てが刀工となるのかもしれないが、本項では主に刀鍛冶について述べる。
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[編集] 歴史
- 古代 - 隕鉄を鍛え、刃物を作るという行為はされていたが刀工と呼ばれるほどの者は現れていない。
- 平安時代 - 山城国、三条宗近の刀が最古の刀として残っている。このころには、日本独自の湾刀を作る技術が成立していると見られる。
- 鎌倉時代 - 武家政治が起こることにより、刀剣界も活発化。後鳥羽上皇(自らも作刀)の積極奨励策により、次々と名工が生まれる。
- 室町時代 - 平和な時代が始まったため、需要は下がったが、明への重要な輸出品としての刀が作られるようになった。
- 江戸時代末期 - 尊王攘夷論論者によるテロリズムや殺傷事件の増加、それに対する治安体制の強化などによって刀剣需要が一気に増加。粗製濫造といわれるほどの大量作刀が行われた。
- 明治時代 - 廃刀令などによる需要減で一般の鍛冶に転向する刀工が増え、刀工が激減した。のちにサーベルに代わって日本刀が軍刀として採用されたことで刀工の命脈は保たれた。
- 昭和時代 - 軍国主義の台頭により軍刀需要が増加し、手間暇かかる伝統的作刀にたよらない大量生産方法が模索される(ステンレス刀など)。さらにナショナリズムの高まりの中で一般からの日本刀需要も増え、伝統的な作刀技術の散逸を危惧する声がたかまり、伝統的刀工を育成・増加させる試みがなされた。
[編集] 逸話・伝説
鉄の塊から鋭利な刃物を作る技術者である彼らは、しばしば神秘的な存在としてみられた。 たとえば、正宗には「刀の切れ味を決める焼き入れの際の水の温度を知ろうとして水に手を触れた弟子の手を斬って落とした」、小鍛冶宗近の「小狐丸」には稲荷大明神の化身が作刀を手伝ったなどの逸話がある。他にも伝説上の刀工「天国」(あまくに)は日本刀剣の祖とされ、平家重代の宝刀「小烏」や江戸亀戸天神の宝剣も天国の作といわれる。特に後者は「一度鞘から抜き放てば必ず豪雨を呼ぶ」という逸話も残されている。
また、日本の古い物語上で土蜘蛛あるいは鬼といった妖怪として退治されていった者たちは、多くの場合はこの製鉄に関わる者たちであったといわれている。
[編集] 著名な刀工一門
- →刀剣の業物一覧 も見よ