切削油
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
切削油(せっさくゆ)とは、金属などの切削加工を行う際に、摩擦抑制と冷却のために使用する油や水などの液体の総称。鍛造加工や引き抜き加工など、切削以外の加工に使用される油を含め加工油と呼ぶ場合がある。
[編集] 種類
切削油には現在、主に油性切削油と水溶性切削油がある。油性切削油は鉱物油に切削性能を向上させる目的で添加剤を加えたものが多い。水溶性切削油は、油を溶剤によって水に溶かして使用する。水溶性切削油は、冷却が優先される加工に使用されると同時に、数値制御(NC加工)により無人化された機械で、加工時の火災防止を目的に使用され、現在、金属加工で使用される切削油の主流となっている。
[編集] 歴史
人手で工作機械を操作していた時代には、切削油は、切削工具と被削材の摩擦を減少させる目的で使用され、主に油性切削油を少量使用していた。ハイス工具から超硬工具へと変わり、機械が数値制御になると、生産性は飛躍的に向上し、機械の操作は自動化され、切削油の目的が変化した。切削油は、(1)高速加工により発生する熱の冷却 (2)無人化しても加工点やテーブル面に切り屑が残らないようにフラッシングする目的を持った。このため、現在、大量の切削油をポンプにより循環して使用するにいたっている。
[編集] 効果
切削油は加工点を潤滑・冷却することにより、精度や面粗さを向上させ、工具の磨耗を抑制する。また、フラッシング効果により、切り屑を洗い流し、信頼性の高い機械の稼動を助ける。さらに、切り屑などの熱による機械の熱変異防止にも役立つといわれている。しかし、その一方で、金属加工工場内の汚れを引き起こし、長期的には機械の細部に侵入することで機械にダメージを与えるなどの短所も持つ。近年は、切削油循環ポンプの電力の省エネや、切削油が最終的に金属粉を含んだ廃油となることから、省エネや廃油などの環境側面から切削油を使用しない加工法(ドライ加工)や微量の油で加工するセミドライ加工(MQL加工)が提唱されている。