前線 (気象)
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気象でいう前線 (ぜんせん、weather front) とは、二つの気団が接触したときに生ずる不連続面(前面)が地上と交わる線のことをいう。
前線は、寒冷前線・温暖前線・停滞前線・閉塞前線に分類される。温暖前線は暖気の流れる方向に、寒冷前線と閉塞前線は寒気の流れる方向に移動する。一般的には偏西風の影響を受けて西から東へ動く事が多いが、停滞前線は余り移動しない。前線が通過する地点では、気温・風(風向・風速)・気圧などが急変する。
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[編集] 寒冷前線
冷たい気団が暖かい気団に向かって移動する際の接触面で起きる。日本付近をはじめ北半球では、主に温帯低気圧の進行方向後面に、南西方向に連なって伸びる。寒気と地表の間に抵抗があるため、上図のように寒気が上空に張り出した形で気団が移動する。寒冷前線が通過すると気温が急に下がる。長く連続した雨になることは少ないが、積乱雲が発生するため、短時間で強い雨をもたらし、雷や突風、雹をともなうことも多い。また、温度差が大きい場合竜巻が発生の遠因になる。
[編集] 温暖前線
暖かい気団が冷たい気団に向かって移動する際の接触面で起きる。日本付近をはじめ北半球では、主に温帯低気圧の進行方向前面に、東西に連なって伸びる。暖気が寒気に乗り上げるため、上図のように一様に傾斜した境界面ができる。温暖前線通過時には気温がゆっくり上昇する。乱層雲が発達し、ある程度連続した雨が降りやすいが、その降り方は弱い。ただし、南海上からの暖かく湿った空気が温暖前線に流れ込んで活動が活発になると、温暖前線特有の地雨性の降雨でなく、どちらかといえば寒冷前線の通過時にあるような非常に激しい雷雨になることがある。
日本付近では、温暖前線の北側を吹いてくる東風(寒気団)が長らく太平洋上にあるためかなり温まり、地上や海面上では前線通過時でも余り気温の変動が無い場合が多い。
[編集] 停滞前線
暖かい気団と冷たい気団の勢力が等しい状態又はほとんど移動しない状態で接触した場合に発生する前線。上空の風向と、前線の走向が並行になっていると停滞前線ができる。停滞前線は、多くは東西に伸びているが、南方の暖気団と北方の冷気団との相対的な勢力により、南北に上下運動をするので、前者が打ち勝てば前線は北上し、後者が打ち勝てば前線は南下する。雲の状況と雨の降り方は温暖前線に似て、長く連続した雨が降る。
梅雨前線、秋雨前線などが代表例である。その他、春の菜種梅雨時、晩秋or初冬のサザンカ梅雨時のぐずつき天気も、本州南岸沿いに伸びる停滞前線が起因であることが多い。
[編集] 閉塞前線
温帯低気圧から伸びる温暖前線と寒冷前線では、後者のほうが進行速度が大きいため、低気圧の中心近くでは寒冷前線が温暖前線に追いつき閉塞前線となる。温暖前線の前の寒気と寒冷前線の後ろの寒気とは、通常わずかながら温度差があるため、寒気同士が接触し、その上空に暖気が押し上げられる。寒冷型閉塞前線の場合は、寒冷前線側の寒気の方が温度が低く、温暖前線側の寒気の下にもぐりこんで行き、閉塞前線は寒冷前線面に沿って形成される。温暖型閉塞前線では、温暖前線側の寒気の温度が低いため、寒冷前線側の寒気がその上に上昇し、温暖前線面に沿った閉塞前線ができる。なお、閉塞前線を伴った低気圧は暖気が上空に押し上げられてしまうため、発達のためのエネルギーが無くなって弱まって行く。