原理主義
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原理主義(げんりしゅぎ)は、ファンダメンタリズム (Fundamentalism) の訳語であり、宗教上の原典を絶対視する主張・態度を指す用語。この主義を支持する人物を原理主義者と言う。原点回帰を目指す信仰復興運動の端緒となる一方で、既存の宗教勢力の権威を否定する大義名分として、反動グループが掲げる場合もある。
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[編集] 和訳語の歴史
プロテスタントの一潮流を指すfundamentalismは、もともと宗教学分野において「根本主義」と和訳されていた。
後にムスリム系組織を名乗る勢力によるテロリズムが増加した際に、同じ単語fundamentalismが報道業界により「原理主義」と翻訳されたので、「イスラム教原理主義」という言葉が日本で一般的となった。それに伴い、キリスト教の根本主義も報道においては「キリスト教原理主義」と訳されるようになってきている。宗教や他の方法論に原理主義の要素は多かれ少なかれ含まれてはいるが、この語「原理主義」は日本語としての歴史が浅いこともあって、プロテスタントとイスラーム教の一部を指す用法以外は未だ一般的ではない。
[編集] プロテスタント
詳細はキリスト教根本主義を参照。
元来、「ファンダメンタリズム」という呼称は、1900年代初頭、米国のプロテスタントの保守派の一勢力が 1. キリストの処女降誕、2. キリストの神性、3. キリストの奇跡、4. キリストの贖罪死、5. キリストの復活と再臨、を伝統的なキリスト教の五つの根本教義(ファンダメンタルズ)とみなし、これを堅持することを述べたことに因んでいる。しかし、これらの条件だけでは、リベラルと呼ばれる潮流のさらに極端な一部を除くほとんどのキリスト教徒が含まれてしまい、この語の使用状況と合わない。
実際の使用状況では、上記のファンダメンタルズの支持に加えて、聖書に関して逐語霊感説(=聖書無謬説)をとり、聖書は一字一句神の霊感によって書かれているとして、聖書に見られる様々な表現にメタファー(比喩)や抽象的な表現も含まれていることを考慮せず、一字一句字義的に理解する考え方を指してこの語が用いられている。すなわち現在「Fundamentalist Christianityファンダメンタリストのキリスト教」と呼ばれている考え方が「fundamentalism」という呼称の起源であり語源である。このような考え方の顕著な例として、旧約聖書の創世記を字句通り正しいとみて、進化論を全面的に否定する創造論があげられる右記の例に見られるように、原典を逐語的に理解するという意味での「原典回帰」の側面を持つ。
[編集] イスラーム教
詳細はイスラム原理主義を参照。
イスラームでは、19世紀末より、西洋的な近代社会概念や文化に反発するムスリムが、宗教的自覚をうながすためにはじめたイスラーム復興運動のことである。非ムスリムからは原理主義のイスラーム教すなわちイスラム原理主義と呼ばれる。
[編集] ソフトウェア分野での原理主義
工業、特にソフトウェアの分野における原理主義とは、制作物を公的な規格や仕様にできるだけ合致させようとする主張・態度のこと。これは、英語で宗教になぞらえてエヴァンゲリズム(Evangelism、福音主義)と呼ばれていたものの訳語である。転じて、特定の主張に固執する人物を揶揄して、あるいは、ユーモアを込めて、原理主義者と呼ぶことがある。なお、宗教的な意味においても、「福音主義」は原理主義の婉曲表現として用いられる事があるが、実際には、福音主義と原理主義は区別されている。
後者の比喩的表現としての「原理主義」は、近年の日本においてはアニメ・漫画・鉄道趣味・軍事・パソコン等の趣味の分野においても用いられることがある。