古今著聞集
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古今著聞集(ここんちょもんじゅう)は鎌倉時代、13世紀前半の人、伊賀守橘成季によって編纂された世俗説話集。単に『著聞集』ともいう。20巻約700話からなり、『今昔物語集』に次ぐ大部の説話集である。建長六年(1254)10月頃に一旦成立し、後年増補がなされた。
[編集] 概要
古今著聞集序には「江家都督清談之余波也」とある。さらに実録を補う事が意図であることを述べ、勅撰集の部類に倣ったその構成は実に整然としている。六国史の後、平安中期から鎌倉初期に至るまでの説話700余編を、神祇・釈教・政道忠臣・公事・文學・和歌・管絃歌舞・能書・術道・孝行恩愛・好色・武勇・弓箭・馬藝・相撲強力・書圖・蹴鞠・博奕・偸盗・祝言・哀傷・遊覧・宿執・闘諍・興言利口・恠異・變化・飮食・草木・魚虫禽獣の30編に整然と分類され、百科事典的性格を持っている。各巻の配列は年代順。整然として題材を多く王朝社会に仰ぎ、尚古傾向も著しい。今昔物語・宇治拾遺物語とともに日本三大説話集とされる。
公卿日記を下地とした記録風の逸話から、下々の庶民に関する異聞奇譚まで、その描写対象は多岐にわたるが、中でも各種芸能の説話に富んでいるのは、琵琶を藤原孝時に学び、詩歌絵画などにも優れた作者成季の才芸を反映している。作者が関白九条道家の近習であったこともあり、『古今著聞集』の観点は摂関家寄りである。江戸期の逸著聞集・近世江戸著聞集等多くの著聞集物に影響を与えた。
「日本古典文学大系」(岩波書店)、「新潮日本古典集成」(新潮社)所収。