哲学する

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「哲学する（てつがくする）」という営みに定義を与えるのであれば、それは「この世の理をその原理まで遡って探求する事」ということが出来るであろう。およそありとあらゆる事柄はその営みの対象となり得る。

[編集] 歴史

古くは自然現象に対する畏怖や驚きから始まり、そこから来る「知りたい」という欲求が人々を哲学するという営みに駆り立ててきた。やがて自然現象を対象に哲学するという営みが自然科学という学問を、また全ての人間がその中で生きるところの社会を対象に哲学するという営みが社会科学という学問を生み出すといったように、哲学するという営みはその対象とするところのものに応じて多くの学問を派生させていった。

[編集] 学問としての哲学との相違

「哲学する」事と「哲学を学問として学ぶ」事の間には大きな隔たりがある。哲学を学問として学ぶという事は、古代ギリシアのソクラテスやプラトンにはじまり現代に至るまで、哲学史に現れ出た思想家達の思想体系を単純に学問の対象として学ぶという事である。それに対し哲学するという事は、その主体が自身の抱える問題に対して、それら思想家達と同じ方法で、あるいは時に彼等との直接的、（文献を通じての）間接的対話から、答えを見出そうとする事を言う。

古代においてソクラテスは「哲学は死の練習」であると主張した。その意味するところの事は、人間の精神あるいは魂は日常的には身体の束縛の下不純な状態にあるが、哲学するという営みを通じてそれを純化してゆく事が出来る、そして魂が究極の純粋な状態にあるのはそれが身体の束縛から解き放たれた時即ちその持ち主たる人間が死を迎えたときである故に、人間は哲学する事によってあらかじめ死を体験する事が出来るという事である。人間は哲学する事から自身の精神を鍛え上げる事が出来るというのが彼の言わんとするところである。

伝統的には哲学する事は「善（よ）く生きる事」を目的とすると説かれる。それは万人に対して身近でありながら日常的には忘れ去られている生や死、あるいは自己の存在意義といった問題を今一度問い直し、それらに対する考察や自分なりの意味付け、回答を通じて、精神的に充実した人生を送る事を意味する。ところで、ある一定の精神的成長過程を通過してきた人々の多くは、これらの問題に対して一度ならずとも深刻に心を悩ました覚えがあるだろう。そうした営みこそはまさに純粋に哲学する事なのである。それ故哲学する事に対して尻込みする必要はない。哲学はおよそ思考する為の理性を備え、知る事を欲する人間の全てに対してその門戸を開いているのである。