均衡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
均衡(きんこう equilibrium)とは、一般には釣り合いがとれた状態を指す。経済学においては、需要量と供給量が釣り合って価格が静止した状態のように、ある経済量が変化しない、動かない状態を指す。
目次 |
[編集] 部分均衡と一般均衡
需要と供給のバランスに大きな変動がなければ、均衡している状態(均衡状態)といえる。需要と供給を一致させる価格を均衡価格ないし均衡値という。経済学の分野では、一つの財だけを取り上げたとき、その財に関する均衡状態を部分均衡という。他方、社会全体の人口、技術、嗜好、生産組織等の与件を固定し、競争を徹底的に行い、これ以上変化がない静止の状態を思惟のない中で考えた均衡状態を一般均衡という。
[編集] マーシャルの一般均衡
一般均衡状態を最初に考えたのは、レオン・ワルラスである。これに対して、アルフレッド・マーシャルは、3つの時間区分とそれに対応する市場の広さの違いによる均衡関係を考え、現実的市場に接近しようとした。第1は最も短期のもので、卸売市場に出荷された生鮮食料品の需給のように、供給量一定で、これに需要曲線が交わって価格が得られる状態である。これを一時的均衡という。ここで成立する値段が高ければ、生産者は操業度を上げて生産量を増加させる。すなわち、資本設備一定の下で生産量を増減させる。こうした適応によって得られた均衡を短期均衡という。短期均衡の視点に立つ生産者は、より有利な市場を求めて、複数の卸売市場を考察対象に入れている。しかしながら、もし短期均衡で決まった価格が高ければ、生産者は設備投資を行い、生産量の拡大を図るだろう。このとき生産者は、短期均衡よりもさらに広い視点に立って、何処の地点の工場を立地させるかを考えるに違いない。こうして資本設備の変化を考慮に入れた条件の下で成立する均衡が、長期均衡である。マーシャル体系は、一時的、短期、長期の中で、一方の均衡が他方の不均衡を生み、その均衡化への動きが、他方の不均衡化を生み、時間と空間の中で動く社会を考えた。
[編集] 均衡の種類
均衡には、昨年の生産量が今年の需要量と均衡関係を持つという異時均衡、時間を全く含まない静学均衡、均衡諸量が時間と共に動いていく動学均衡等がある。また、均衡値から離れたとき、均衡値に戻る傾向を持つ安定均衡と離れていく不安定均衡とがあり、その条件を考察するのが安定性分析である。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- A. Marshall, Principles of Economics, 9ed., 2vols, 1961.
- L. Walras, Elements d'economie politique pure, 1874-77.
- P. A. Samuelson, Foundation of Economics Analysis, 1947.