大動脈解離
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大動脈解離(大動脈乖離とも、だいどうみゃくかいり、Aortic dissection)とは、なんらかのきっかけによって、3層構造を作っている大動脈のうち真ん中の層の膜(中膜)に血流が入り込んでしまい、層構造が別々に剥がれていく(解離してしまう)病気である。大動脈瘤の一種として分類されることがあり、別名を解離性大動脈瘤と言う。
快楽亭ブラック (2代目)、俳優の故・石原裕次郎、加藤茶らが罹患した疾病である。両名とも緊急手術で生還した。
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[編集] 病態
正常な層構造が壊れた大動脈は弱くなり、最悪の場合破裂してしまう。また、大動脈の出発点である心臓に解離が進めば、その根元にある冠動脈を閉塞して心筋梗塞を起こしたり、大動脈弁を壊したり(大動脈弁閉鎖不全症)、心臓を包む心嚢という袋の中に出血を起こしたりする(心タンポナーデ)。これらの合併症は死に至るものであり、大動脈解離が危険な病気である由縁といえる。
[編集] 分類
Stanford(スタンフォード)分類、DeBakey(ドゥベイキー)分類が用いられる。
- Stanford分類
- Stanford A
- 上行大動脈に解離が及んでいる状態
- Stanford B
- 上行大動脈に解離が及んでない状態
- Debakey分類
- DeBakey I
- 上行大動脈に入口部があり、腹部大動脈まで解離が及ぶ状態
- DeBakey II
- 上行大動脈のみ解離している状態
- DeBakey III
- 下行大動脈のみ解離している状態
[編集] 症状
強烈な痛みは患者の96%に見られ、解離の場所を推定するのにも重要な症状である。心不全症状を起こすこともあるほか、初発症状が突然死であることもある。また、解離によって血圧の上昇または低下が起こるほか、胸水の貯留が見られることもある。
[編集] 検査・診断
激痛から大動脈解離を疑う。胸部X線で大動脈陰影や上縦隔の拡大が見られることがあるが、特に所見が見られないこともあるため、基本的にCTやMRIで診断する。
- CT
- 静脈内に造影剤を注入して造影する撮影法が基本である。真腔、偽腔、フラップの検出が可能で、感度は83~87%、特異度は87~100%と高い。最近登場したスパイラルCTはより正確な診断が可能であり、感度は96%、特異度は100%にも及ぶ。
- MRI
- さまざまな断面で鮮明な画像を得られるのが特徴である。解離の範囲や状態を正確に把握するのに適している。感度・特異度はともに96%。
- 心エコー
- 内膜フラップを検出できれば確定できる。
[編集] 治療・予後
予後はStanford AであるかStanford Bのどちらかによって大きく異なる。Stanford Bの場合、脳に血流を送る腕頭動脈、左総頚動脈が保たれるため、保存的に治療が行われる。ただし、腹腔動脈、腎動脈に解離が及んだ場合は手術適応となりえる。Stanford Aの場合、腕頭動脈、左総頚動脈に血流が減少し脳死の危険が高いので、緊急手術適応となる。大動脈弁に解離が及んで大動脈閉鎖不全、心筋梗塞、心タンポナーデを起こした場合、非常に予後は悪い。
[編集] この病気に罹った主な著名人
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