強制執行停止決定
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強制執行停止決定(きょうせいしっこうていしけってい)とは、日本の司法制度における決定による裁判。民事訴訟法第398条又は民事執行法第36条による当事者に申立て権があって裁判所が応答するものと民事執行法第10条6項(これを準用する11条2項を含む)による当事者に申立て権がなく裁判所の裁量によって発せられるものがある。
この決定がなされると、仮執行の付された判決や仮執行宣言が付された支払い督促、確定判決による強制執行を本案裁判の判決があるまで一時停止する効力がある。なお、実施された執行処分の取消し決定も民事訴訟法398条と民事執行法第36条1項では可能であるが、実務上あまりないのでここでは省略する。強制執行停止決定では担保をたてないでも発令可能であるが、実務上はほとんどが担保提供を要する。
目次 |
[編集] 種類
強制執行停止決定には、強制執行可能な債務名義の種類によってその停止決定の要件が異なる。手形訴訟などはここでは省略する。
仮執行の付された支払督促に異議の場合は、民事訴訟法第398条1項3号。原督促の取り消しまたは変更となる事情がないとはいえないこと又は著しい損害を生じることの疎明が要件。督促異議理由書と債務名義金額の約3分の1の担保があれば、実務上大体が発令される。
仮執行の付された判決に控訴の場合は、民事訴訟法第398条1項3号。原判決の取り消しまたは変更となる事情がないとはいえないこと又は著しい損害を生じることの疎明が要件。控訴理由書と債務名義金額の約3分の1の担保があれば、実務上大体が発令される。
仮執行の付された判決に上告または上告受理申立ての場合は、民事訴訟法第398条1項2号。原判決の破棄の原因となるべき事情及び著しい損害を生じることの疎明が要件。著しい損害の壁は高く、認められることはあまりない。
確定判決に特別上告または再審の場合は、民事訴訟法第398条1項1号。不服の理由として主張した事情が法律上理由があると見え事実上の疎明があり、かつ著しい損害を生じることの疎明が要件。著しい損害の壁は高く、ほとんど認められることはない。
確定判決等に請求異議などの場合は、民事執行法第36条1項。不服の理由として主張した事情が法律上理由があると見え事実上の疎明があり、かつ著しい損害を生じることの疎明が要件。著しい損害の壁は高く、口頭弁論による審理をへないでなされたとか口頭弁論終了後に任意弁済したのに強制執行が実行されたなど特段の事情がない限り、認められることは少ない。
[編集] 発令裁判所
督促異議や上訴の場合であっても、事件記録のある裁判所が発令することができる(民事訴訟法第399条など)。控訴などの本案事件担当部がすることが多いが、東京地方裁判所の場合は民事9部(保全部)が担当するのが原則。
[編集] 担保
発令裁判所の所在地の法務局に供託することが原則(民事訴訟法第400条)。銀行など金融機関との支払保証委託契約の締結によって代えることができる(民事訴訟規則)。担保額は確定判決まで本案判決が遅延したことによる損害を考慮して決められる。