抑圧 (心理学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
抑圧(よくあつ)とは、自我を脅かす願望や衝動を意識から締め出して意識下に押し留めることであり、意識されないままそれらを保持している状態である。精神分析において想定される自我の防衛機制のうち、最も基本的なものと考えられている。
[編集] 概要
抑圧された衝動が無意識に浮上すると考えられ、しばしば有害であると考えられている。例えば、抑圧されている性欲は、神経性咳嗽や失言などの形で表現される。このように、意識的主体が願望を意識していないためそれを話すことはできないが、本人の肉体は徴候によって禁じられた願望を表現している。
精神分析や大衆文学においてはこの概念は「動機づけられ忘れる」こととして用いられる。ところが、この概念の人気や広い使用にも拘らず、どこでその動機づけが行われているか、またどのようにして過去の出来事を抑圧するのかに関しては全く示されていない。
とりあえず、精神分析学上は抑圧は適切な人格の発達のために必要とされる概念とされる。この文脈においては、抑圧は何が良いか何が悪いかの倫理的な判断を行うための幼児期の人格形成の概念として、また「自我」「超自我」と呼ばれる自我形成の2つの場で話される。
精神分析家は、患者の抑圧されている衝動を明らかにして意識化させ、その後いかにこれらの感情及び衝動に関して感じられた心配事を減少させるかを患者に教えることによってこの行動を減少させる治療をする。
また、しばしば外傷性事件の記憶が抑圧される事は有り得ないのではないかと主張されている。この概念は衝動ではなく記憶に重点を置いているので抑圧とは厳密には異なるが、よく混同される。現在この物議を醸す抑圧された記憶の存在可能性に関しては認知心理学者や脳科学者が激しく議論を行っている。