旅行業務取扱管理者
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旅行業務取扱管理者(りょこうぎょうむとりあつかいかんりしゃ)とは、旅行業法に定められている旅行業者及び旅行業者代理業者の営業所における顧客との旅行取引の責任者のことである。また、責任者となるための国家試験である旅行業務取扱管理者試験に合格した者すなわち旅行業務取扱管理者資格取得者のこと、あるいは資格そのものを指すこともある。2005年4月に旅行業法が改正される前には旅行業務取扱主任者と呼ばれていた。
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[編集] 旅行業務取扱管理者の選任
旅行業法では 第1条(目的)に定められている『旅行業務に関する取引公正の維持』『旅行の安全の確保』『旅行者の利便の増進』を営業所単位で管理・監督させるために、営業所毎に最低1人以上後述の旅行業務取扱管理者試験に合格した者を旅行業務取扱管理者として選任することが義務付けられている。選任された者の氏名は旅行業の登録及び更新の際に営業所毎に名簿にして国土交通省や都道府県庁に提出し、営業所に掲示する旅行業登録票に選任者の氏名を記載しなくてはならない。また募集型企画旅行のパンフレットには取扱営業所名とあわせて選任者の氏名を記載しなくてはならないと定められており、通常パンフレットの裏面に印刷または押印されている。
旅行業務取扱管理者に選任される者は毎年1回国土交通大臣が行う国家試験である旅行業務取扱管理者試験に合格した資格者でなくてはならない。資格には国内の旅行業務のみ取り扱える国内旅行業務取扱管理者と国内と海外の両方の旅行業務を取り扱える総合旅行業務取扱管理者の2種類があり、国内旅行のみ取り扱う営業所には国内旅行業務取扱管理者資格または総合旅行業務取扱管理者資格を持つ者、海外・国内の両方の旅行を取り扱う営業所には総合旅行業務取扱管理者資格を持つ者を選任しなくてはならない。複数の営業所での兼任や名義貸しは禁止されている。1人で営業している場合は当然その者は旅行業務取扱管理者資格を持つ者でなくてはならないことになる。なお、国土交通大臣の指導により10名以上いる大規模営業所は2名以上選任することが求められている。小規模な営業所では通常営業所長が、大規模な支店・営業所では各部・課ごとに部長や課長が選任されていることが多い。選任されるのは管理職である必要はないが、会社組織で管理・監督という業務を行う必要上、通常は管理職が選任される。
[編集] 旅行業務取扱管理者の職務
次の9業務についての管理・監督に関する業務を行う。以下の職務全てを旅行業務取扱管理者自身が行なわなくても良いが「取引条件の説明」及び「書面の交付」の際に旅行者から依頼があった場合は、旅行業務取扱管理者が最終的な説明をしなければならない。また、旅行者から請求があった場合は国土交通省令によって定められている様式の旅行業務取扱管理者証(注)を提示しなければならない。
- 旅行者に対して取引条件を説明する
- 旅行者に対して適切な書面を交付する
- 適切な広告を実施する
- 旅行に関する苦情を処理する
- 料金の掲示
- 旅行に関する計画の作成
- 旅行業約款の掲示及び据え置き
- 旅程管理措置
- 契約内容に関する明確な記録または関係書類の保管
(注)選任された旅行業務取扱管理者、すなわち営業所における旅行取引の責任者であることを証明するために所属旅行会社が発行する証明書。旅行業務取扱管理者試験の合格者であっても選任されていなければ発行されない。旅行業務取扱管理者試験の合格証のことではない。
[編集] 国内旅行業務取扱管理者
国内旅行業務取扱管理者は、国内の旅行業務のみが取り扱える。これ以外は総合旅行業取扱管理者と業務の違いはない。
国内旅行業務取扱主任者に選任されるためには、全国旅行業協会が代行実施する国家試験(国内旅行業務取扱管理者試験)に合格しなければならない。
[編集] 総合旅行業務取扱管理者
総合旅行業務取扱管理者に選任されるためには、日本旅行業協会が代行実施する国家試験(総合旅行業務取扱管理者試験)に合格しなければならない。
[編集] 試験
[編集] 国内旅行業務取扱管理者試験
年一回、例年9月に実施され、2006年度は9月10日に、東京・大阪・名古屋・札幌など全国8都市11会場で実施された。旅行業法第11条の3第4項の規定に該当する者(過去の試験で不正を行い、期間を定めて受験を禁止された者)以外の者は受験することができる。 受験料は2006年度は5800円であった。 試験科目は次の通り。合格するには、全ての科目で一定以上の得点を得る必要がある。2006年度の合格点は各科目60点以上(各科目100点満点)、2003年度~2005年度と同じである。なお、2006年度から「国内旅行実務」で合格点に達した者は翌年度の試験に限り同科目の受験を免除されることとなった。
- 旅行業法及びこれに基づく命令
- 旅行業約款、運送約款及び宿泊約款(配点は標準旅行業約款が80点、各種約款は20点)
- 国内旅行実務(出題内容はJR、国内航空などの運賃計算及び国内観光地理で配点は各50点)
2006年度の受験者総数は16,469人で合格率は33.4%であった。
[編集] 総合旅行業務取扱管理者試験
年一回、例年10月に実施され、2005年度は10月10日、に東京・大阪・名古屋・札幌など全国8都市で実施された。国内試験とは会場が異なっていることもある。旅行業法第11条の3第4項の規定に該当する者以外の者は受験することができる。 受験料は2005年度は6500円であった。 試験科目は次の通り。合格するには、全ての科目で一定以上の得点を得る必要がある。2005年度の合格点は60点(海外旅行実務のみ120点)海外旅行実務のみ200点満点、これ以外の教科は各100点満点なので、実質的に全科目6割以上の得点が必要。
- 旅行業法及びこれに基づく命令
- 旅行業約款、運送約款及び宿泊約款(配点は標準旅行業約款が80点、各種約款は20点)
- 国内旅行実務(出題内容は、JR・国内航空などの運賃計算及び国内観光地理で配点は各50点)
- 海外旅行実務(出題内容は、出入国管理法令、出入国管理実務、国際運賃計算、海外観光地理、旅行外国語で配点は各40点)
- 国内旅行業務取扱管理者試験に合格している者は「旅行業法令」「国内旅行実務」の2科目の受験を免除される。
- 国内旅行業務取扱管理者試験と同一科目であっても試験問題は異なる。
両試験を通じ、国内旅行実務の観光地理の分野はこの試験で最も難易度が高いといわれ、多くの受験生が苦しめられる。