極型ファロー四徴症
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極型ファロー四徴症(きょくけいふぁろーしちょうしょう)は、ファロー四徴症のうち、肺動脈狭窄が閉鎖に至った疾患で、ファロー四徴症の最重症型。先天性心奇形の一種。
解剖学的な特徴を表現した別名として、肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損症とも呼ばれる。
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[編集] 病態
ファロー四徴症は肺動脈へと続く右心室流出路が狭窄した病気であるが、本症はこの狭窄が高度になり肺動脈閉鎖に至った物である。右心房から肺動脈への血流の途絶は動脈管か主要大動脈-肺動脈側副動脈(英Major aortopulmonary collateral artery,以下MAPCA)を経由して送られる。他の心室中隔欠損等は通常のファロー四徴症と同じ。
[編集] 疫学
先天性心疾患の2.6%、ファロー四徴症の16%を占める。逆にMAPCAの90%は極型ファロー四徴症を伴う。30%は22q11.2欠失症候群(22番染色体部分欠失)を合併する。
短絡様式としては、78%が動脈管開存で、22%がMAPCA(うち2/3は大動脈からの直接分枝。残りは、気管支動脈・鎖骨下動脈・内胸動脈・肋間動脈などから起始して中心肺動脈と交通する。)で占められる。
[編集] 分類
- 「動脈管」「左右連続性の中心肺動脈」をもつ型
- 「動脈管」「MAPCA」をもつ型
- 「動脈管」を欠き「MAPCA」をもつ型
[編集] 症状など
[編集] 新生児期~乳児早期
動脈管の収縮により、チアノ-ゼ増加、呼吸困難、哺乳困難、体重増加不良等の症状が起こるほか、MAPCA合併の場合、大量左-右シャントにより、心不全及び呼吸不全を引き起こす。肺血流量が適切に保たれる場合では発育は正常である。
[編集] 幼時期以後
低酸素血症により、運動時のチアノーゼ増加、呼吸困難、動悸等の症状が現れるほか、多血症により頭痛、蛋白尿、関節痛が、右左シャントにより脳膿瘍、感染性心内膜炎が発生する。
[編集] 理学所見
全身性チアノ-ゼの他、幼児期以上ではばち指が見られる。速脈が見られることもある。22q11.2欠失症候群を合併している場合、特有顔貌、鼻声、精神遅滞が見られる。
聴診では、I音正常、II音単一が確認されるほか、20%の患者から収縮期クリック音、90%の患者から連続性雑音が確認される。
[編集] 検査所見
[編集] 胸部X-p
しばしば右側大動脈(主にMAPCAに合併)、心臓の形は正常or木靴型、右第1弓の突出、細い肺野血管影
食道造影の側面像でMAPCAが食道の後面に圧痕像を作る
[編集] 心電図
洞調律、右軸偏位、右室肥大が確認できる。
[編集] 心エコー
心エコーにて、確認できることとして、膜様部の心室中隔欠損、太い大動脈が心室中隔に騎乗して起始している事、右室漏斗部の低形成、大動脈弓から起始する動脈管(胸骨上窩からの像)等がある。MAPCA描出は困難である。
[編集] 心カテーテル
70~85%の症例で、大動脈のSpO2が低下している。肺動脈圧・肺動脈楔入圧は通常低いが、MAPCAを持つ症例では10%に肺高血圧が確認される。
心室造影では、膜様部の心室中隔欠損、太い大動脈が心室中隔に騎乗して起始、右室漏斗部の低形成
大動脈造影・選択的造影では、動脈管・中心肺動脈・MAPCA ・肺動脈が造影される。
[編集] 診断
[編集] 疑う徴候
連続性心雑音とチアノ-ゼで極型ファロー四徴症を疑う。
[編集] 鑑別
極型ファロー四徴症と鑑別を付ける必要がある疾患としては、純型肺動脈閉鎖の他、完全大血管転換・両大血管右室起始・単心室・三尖弁閉鎖などに肺動脈閉鎖・動脈管開存を合併したケースや動脈管開存+MAPCAのケースなどがある。
純型肺動脈閉鎖では、新生児期の高度のチアノ-ゼと心電図検査にて左室肥大または左室優勢と成ること、心エコー検査で小右室・VSD・大動脈騎乗が存在しないことが確認できる。
完全大血管転換・両大血管右室起始・単心室・三尖弁閉鎖などに肺動脈閉鎖・動脈管開存を合併したケースは心電図、胸部レントゲン撮影、心エコー図などで総合的に鑑別を行う。
動脈管開存+MAPCAのケースは連続性雑音の最強点で鑑別を行うことが出来る。
[編集] 確定診断
これらの非侵襲的検査でおよその診断をしたのち、心臓カテーテル造影検査で確定診断を行うことが出来る。
[編集] 自然歴と予後
- 胎児期にファロー四徴症であった例が出生時に極型ファロー四徴症に進行していることがある
- 生後2年までの死亡率が高い
- MAPCAの10% では新生児期に心不全・呼吸不全
- 幼時期以後は、低酸素血症が続き、多血症による合併症が次第に出現(特に10~20才代)する。蛋白尿が出現し、次第に腎機能は低下。ほかに、高尿酸血症、痛風、関節痛、頭痛、脳血栓、脳膿瘍、感染性心内膜炎、気管支炎、肺炎などの症状が出る。
心不全(心筋が次第に線維化することによる)も進行する。
- 成人期:ファロー四徴症と同じ死亡率 と思われる(10歳以後の毎年の死亡率は6%)。Rastelli手術後は、10~15年で導管狭窄をきたし再手術が必要となる。感染性心内膜炎に罹患しやすい。
[編集] 治療
[編集] 動脈管開存と左右連続性の中心肺動脈のある型
新生児期のチアノ-ゼ・低酸素血症には、プロスタグランジンE投与、鎖骨下動脈-肺動脈短絡手術を行う。6~7才頃にRastelli手術 (右室と中心肺動脈を弁つきgraftで接続し、心室中隔欠損を閉鎖)を行う。
[編集] 動脈管を欠如しMAPCAのある型
比較的太い中心肺動脈に大部分の末梢肺動脈が接続する時(10%)、上の型と同じ手術+MAPCA結紮。 (末梢肺動脈を左右の肺毎に1つにまとめ、この2つを中央で1つに繋ぎ、Rastelli型手術を行う方法もある)
[編集] 参考文献
- 高尾篤良、門間和夫、中澤 誠、中西敏雄編『改定3版 臨床発達心臓病学』中外医学社 2001年 497-501頁(本書では肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損の名称が使われている)