橋本病
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橋本病(はしもとびょう)は、慢性甲状腺炎と同意義に使われ、バセドウ病とともに代表的な甲状腺疾患。
[編集] 概説
頻度は高く、血中自己抗体のデータからは一般成人の10~25%の女性、5~10%の男性に橋本病があると考えられる。しかし、甲状腺機能が低下したり甲状腺が腫大(しゅだい)したりして臨床的に問題になるのはその数分の1で、女性に多くみられる。しばしば家系的発生がみられ遺伝的素因が考えられる。バセドウ病と同様に病因として自己免疫疾患(自分の体の組織成分に対して抗体がつくられることによって起きる疾患)と考えられている。
[編集] 症状
臨床上問題になるのは甲状腺腫と甲状腺機能低下症状。甲状腺腫の大きさは触れないものからかなり大きな甲状腺腫として触れるものまで様々。甲状腺腫は全体にゴム状に硬めに触れる場合が典型例だが、ややでこぼこに触れる場合もある。また若い人では甲状腺腫は柔らかく、表面もスムーズに触れる場合もある。甲状腺機能も正常から著しい低下をきたすものまで様々だが、機能正常例も多い。甲状腺機能低下症状としては倦怠感、寒がり、むくみ(押しても圧痕を残さない)、筋力低下、便秘、体重増加、過多月経、声のかすれ、皮膚乾燥、脱毛などがある。甲状腺機能異常を伴わないものではあまり自覚症状はない。
[編集] 診断
甲状腺に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体〈TgAb〉または抗マイクロゾーム抗体〈TPOAb〉)が陽性になる。また甲状腺エコーでは腫大した特徴的所見がみられる。 甲状腺機能が低下してくると血中甲状腺ホルモン(血中遊離T4、T3など)は低値となり、甲状腺刺激ホルモン(TSH)は高値になる。また、血中コレステロール高値、GOT、GPT、ALPなどの肝機能の軽度高値(このコレステロール低値や肝機能異常は甲状腺機能の改善とともに正常化する)などがある。