消費者余剰
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消費者余剰(しょうひしゃよじょう)とは、消費者の最大留保価格から取引価格を引いたもので、取引から消費者が得る便益を指す。
一般的には、消費者がある財やサービスを購入するとき、最大限支払ってもよいと考える額と実際に支払った額との差分のことだと考えればよい。
このことは以下のような仮想的な実験で考えることができる。経済学の授業の教室の出口にバックにお金をつんだ男がたっているとする。彼は教室にいる学生たちに、こういう。「10円あげるから、今日は授業をさぼってください。」もし、10円で出ていく学生がいるとすれば、彼らの経済学の授業への評価は10円以下であることがわかる。10円で出ていかない学生にたいして「じゃあ20円」といってみたとして、この時点で出ていく学生の授業への評価は10円以上20円以下である。男が金額を10円づつ上乗せしていき、最後の学生がでていくまでくりかえせば、それぞれの学生がどの金額のときに教室からでていったかによって、それぞれの学生への授業への金銭的な評価がわかる。(ここでは、学生は自分の選好をいつわって、男からお金をまきあげようとはしないと仮定する。)
もし、学生が十分に合理的で、授業が大学ではなく、市場でうられていたとしよう。そうであれば、それぞれの学生はさきほどの実験でしらべた授業への評価よりも、授業の値段がやすければ、授業を受け、それよりも高ければ、授業を受けないだろう。このことから授業への需要とは、授業の市場価値よりも、授業への評価が高い受講生の数を意味していることがわかる。
ほかの面から見ると、学生たちは、市場価格が自分の授業への評価より低ければ授業料を支払い、高ければ支払わない。したがって、授業の最大留保価格、つまり、授業サービスに学生が最大限支払ってもいい価格とは学生の授業サービスへの金銭的評価額にほかならない。
消費者余剰は最大留保価格から取引価格つまり、市場価格を引いたものである。これはすなわち、個々人にとっては、その人の財・サービスへの金銭的評価額から、それを取得するのに要した市場価格を引いたものである。くだけたいいかたをすれば、財・サービスを消費することによるウレシイ気分○○円から、その値段××円を引いたものである。これは取引をすることで増えるウレシサを金銭的に評価したものといえる。この「ウレシサ−マイナス−値段」を市場全体について合計したものが消費者余剰である。
市場においては消費者の最大留保価格はそれぞれ異なるため、需要曲線と取引価格を高さとする水平線との間の面積が消費者余剰となる。
これらの余剰は、従量税や輸出入などを考慮すると変化する。