深堀骨
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深堀骨(ふかぼり ほね、1966年XX月XX日 - )、は日本の小説家。
目次 |
[編集] 略歴
- 空想小説ワークショップ、都筑道夫の創作講座を受講。
- 創元推理倶楽部分科会に参加。
- SRの会会員。
- 1992年『蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼』で第三回ハヤカワ・ミステリ・コンテスト佳作。
- 2003年『アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記』でバカミス大賞受賞。
[編集] 作品について
- 変わった小説を書く作家として知られているが、優れた筆力を持っていることは間違いない。初の著作である『アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記』のあとがき『後書き、のようなもの~いい木を見る』は秀逸な文章であり後書きとするにはもったいない作品である。しかし、こういった正常な作品をオマケ扱いしてしまうところが彼の特徴である。
- 古今東西の映画・テレビドラマ・CMが深堀作品に大きな影響を与えている。特に時代劇を好むようである。エッセイ『俺はつけ鼻に弱い』(『SFマガジン』2003年10月号所収)は「つけ鼻」を題材にしたユニークなものであり、作風に影響を与えた映像作品が紹介されている。
彼の小説を表現する言葉としてよく用いられるものを以下に挙げる。
[編集] 変な小説
『SFマガジン』に作品が掲載されているがSFとは言い難い。 探偵小説愛好家集団SRの会出身で『ミステリマガジン』に作品が掲載されているがミステリでもない。 時代劇愛好家で、その嗜好は「闇鍋奉行」「隠密行動」に反映されている。かといって、それらが時代小説ではないのは明らかである。
「Speculative Fiction」をSFというように、SFを「Strange Fiction」の略として良いなら、間違いなく深堀骨はSF作家である。
[編集] 変な愛
変な形の愛を語る作家である。
- 『飛び小母さん』は断絶した夫婦の奇妙な邂逅を描く。
- 『バフ熱』では奇病に侵された夫を支える妻の愛が淡々と綴られる。
- 『愛の陥穽』は種を超えた恋愛を、バーのマスターと主人公の会話を通して、巧妙に語りかける。
[編集] 変な恐怖
変な恐怖を描く作家でもある。正統派ホラー小説を書く実力が有りながら、おかしなホラーを書き続ける点に深堀骨の魅力がある。
- 『蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼』はホラーである。深堀作品の中でも異彩を放っている。
- 『バフ熱』は奇病に侵されてゆく街を描いたホラーである。
- 『若松岩松教授のかくも驚くべき冒険』は茸に侵食された街を描いたバイオ・ホラーである。
- 『隠密行動』はモンスターの侵略を描いているホラーである。
[編集] なつかしい雰囲気
- 彼は柴刈天神前という架空の街をノスタルジックに描いている。
[編集] 言葉遊び
インタビュー『不二家のネクターって、時々無性に飲みたくなるじゃん?』で語っているように、深堀骨はストーリーを重視していない。独自の文章世界を構築することに力を費やしている。
- 書籍のタイトルにもある「アマチャ・ズルチャ」は甘茶蔓茶(あまちゃづるちゃ)のCMに触発されたものだという。「ヅ」でなく「ズ」であるところが独特の言語感覚である。
- 『トップレス獅子舞考』は架空の伝統芸能を題材にしているが、内容は言葉遊びに徹している。
- 『白熊座の女は真夏の夜にここぞとばかり舌を鳴らす』は文壇を題材にしているが、内容は言葉遊びとしか言いようが無い。
- 藤原ヨウコウとのコラボレーション『ことのはの海、カタシロの庭』においても、『さいざんす』(『SFマガジン』2003年3月号所収) という挿絵画家を困惑させるような言葉遊びを展開している。
[編集] 食べ物への執着
作品の中での食べ物の描写へのこだわりは並大抵のものではない。ストーリーを重視しない深堀作品独自の、細部に渡る食べ物の描写が、彼の作品を一層際立たせている。
- 『白熊座の女は真夏の夜にここぞとばかり舌を鳴らす』に食べ物への執着が大きく顕れているので一読されたい。
- 2003年のSRの会9月例会で行われたインタビューの表題「不二家のネクターって、時々無性に飲みたくなるじゃん?」が食べ物への執着の大きさを物語っている。ただ飲みたかっただけの食べ物をインタビューの題名にしてしまうところに、深堀作品のエッセンスがある。
- 創元推理倶楽部主催のパーティーにおいて、宇都宮斉が求めたサインに「葱」が描かれていたことを指摘しておこう。その絵は葱には見えない。三本指の干からびた木乃伊の腕のようである。しかしながら、絵の右下に「←ねぎ」と書かれあるので葱なのである。
[編集] 筒井康隆の作風に近いが毒が無い
- ナンセンスな世界観は筒井康隆の作風に似ているものの、批判精神が皆無である。
[編集] 影響を受けた作家
- 夢野久作の影響を、本人は否定している。
[編集] 長編
[編集] 連作短編集
- 『アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記』
- 【地場産業】
- 『バフ熱』SFマガジン 1999年9月号
- 【交通手段】
- 『蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼』ミステリマガジン 1992年11月号
- 【裏社会】
- 『隠密行動』SFマガジン 2002年5月号
- 【植生】
- 『若松岩松教授のかくも驚くべき冒険』ミステリマガジン 1993年11月号
- 【隠れた名店】
- 『飛び小母さん』SFマガジン 2001年7月号
- 【環境衛生】
- 『愛の陥穽』SFマガジン 2000年4月号、5月号
- 【風俗、若しくは芸能、若しくは別の何か】
- 『トップレス獅子舞考』ミステリマガジン 1996年11月号、森下一仁のホームページで公開中
- 【歴史】
- 『闇鍋奉行』(書き下ろし)
- 『後書き、のようなもの~いい木を見る』
- 【地場産業】
[編集] 短編集
[編集] 書籍未収録短編
- 時雨蛤日記(ミステリマガジン 1993年2月号)
- 岩松岩松教授の倫敦消息(ミステリマガジン 1995年2月号)
- 歌丸大将軍の砲兵隊 又は「なぎら健壱の『世界平和』」(SFマガジン2003年1月号)
- さいざんす(SFマガジン2003年3月号)
- 夫と妻の小粋な会話(SFマガジン2003年10月号)
- シンクロナイズド坂(SFマガジン2005年5月号)
- <乳首の長い女ブーム>に異議あり(SFマガジン2005年11月号)
- 白熊座の女は真夏の夜にここぞとばかり舌を鳴らす(文藝ネット 自由図書館)
[編集] エッセイ
- 俺はつけ鼻に弱い(SFマガジン2003年10月号)
[編集] 外部リンク
[編集] オンラインで読める作品
[編集] インタビュー
- SRの会2003年9月例会
- アマチャ・ズルチャ刊行記念インタビュー「不二家のネクターって、時々無性に飲みたくなるじゃん?」