病理解剖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
病理解剖(びょうりかいぼう)とは、病気で亡くなったヒトを対象にして、臨床診断の妥当性、治療の効果の判定、直接死因の解明、続発性の合併症や偶発病変の発見などを目的に系統的な解剖を行うこと。病理解剖(類義語:剖検)は医療行為の一端である。病理解剖は臨床医の依頼に基づき、死亡した患者の家族の承諾を得たうえで病院の解剖室で行われる。執刀は死体解剖資格を有する病理医(医師または歯科医師)が担当し、臨床側の担当医は解剖所見を参考に死亡診断書を発行する。
病理解剖で得られた検査所見は、病理医により剖検診断書または病理解剖学的診断書にまとめられ、臨床医にその結果が報告される。臨床医、病理医、その他の医療者が一堂に会して臨床経過、検査データ、剖検結果などを検討する会議を臨床病理検討会(英語:clinico-pathological conference、略称CPC)と呼ぶ。CPCでの議論や反省を通じて疾患の理解を深め、適切な診断法や治療法の参考にすることが病理解剖の結果を活かす究極の目的である。
日本では大学病院、国公立病院、医療法人などで年間20000件前後の病理解剖が実施されている。その結果は1年毎に日本病理学会により日本病理剖検輯報(ぼうけんしゅうほう)に全例が収載され刊行されている。剖検輯報のような全国規模の病理解剖のデータベースの作成は世界的にも類のない成果であり、多くの研究者により疾患研究や疫学的統計資料として参照されている。
不慮の事故(自殺、事故、事件、他殺、中毒)で死亡したヒトを対象とする行政解剖や司法解剖とは法的にも厳格に区別されている。
[編集] 外部リンク
- 日本病理学会
- New England Journal of Medicine 週刊医学系総合雑誌でマサチューセッツ総合病院のCPCが掲載されている(Case Records of the Massachusetts General Hospital)