発電用水車
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発電用水車(はつでんようすいしゃ)は、水の位置エネルギーを、自由落下させることによってタービンを回転させる機械的エネルギーに変換する水力発電用原動機である。
水は圧縮不能な流体すなわち液体であるので有効エネルギーの大部分が最初の段階で取り出される。 圧縮可能な流体(気体)用のタービンは複数の車輪で構成されるのとは異なり基本的には一個のみですむ。 その中でもランナを複数装備し、動的に使用するランナ数を変更することで効率を高めた水車発電機もある。
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[編集] 理論
[編集] 比速度
比速度(ひそくど)は、実物水車を相似形で縮小したとき、単位落差で単位出力を発生するために必要な回転数である。比速度は次式で示される。
- Ns : 比速度 [m・kW]
- N : 実物水車の回転数 [rpm]
- H : 実物水車の有効落差 [m]
- P : 実物水車のランナもしくはペルトン水車のノズル1個当たりの出力 [kW]
[編集] 無拘束速度
無拘束速度(むこうそくそくど)は、調速機が動作しない場合における、水車がある負荷・有効落差・水量で発電運転中に突然無負荷になった場合の水車の速度である。そのうちの最高速度を最高無拘束速度といい、水車はこれに1分間耐えられるように設計されている。
[編集] 調速機
水車における調速機(ちょうそくき)は、水車の回転数を一定に保つとともに、出力の調整や緊急時における水車の保護を担う装置である。ガバナ (speed governor) とも呼ばれる。
[編集] 速度上昇率
速度上昇率(そくどじょうしょうりつ)は、調速機が正常に働いているとき、定格回転速度で発電運転中に突然無負荷になった場合の速度変化の度合いで、次式で表される。
- δ : 速度上昇率
- Nm : 負荷が遮断された直後の水車の最大回転速度 [rpm]
- Nn : 水車の定格回転速度 [rpm]
[編集] 速度調定率
速度調定率(そくどちょうていりつ)は、調速機が正常に動作しているとき、ある出力で発電運転中に出力が変化したときの速度変化の度合いである。
速度調定率は次式で表される。
- α : 速度調定率
- Nn : 水車の定格回転速度 [rpm]
- N1 : 負荷変動前の水車の回転速度 [rpm]
- N2 : 負荷変動後の水車の回転速度 [rpm]
- Pn : 水車発電機の定格出力 [kW]
- P1 : 負荷変動前の水車発電機の定格出力 [kW]
- P2 : 負荷変動後の水車発電機の定格出力 [kW]
[編集] 水車の付帯設備
- サージタンク(水圧調整器) :負荷急変時の水撃作用緩和のため、水圧管内の圧力を逃がす装置。
- 水位調整器 :水路式発電のヘッドタンク内の水位を一定に保つ装置。
- 吸出し管 :ランナ下流から放水面までの落差を有効に利用するために設けられるもので、内部の水の重さが吸出し力として働く。キャビテーションの防止のためには、放水面までの落差が小さいほうが良い。
[編集] 水車の種類
水車の種類 | 流水方向 | 適用 | 効率の変化 | 定格回転速度 に対する 最大無拘束速度 [%] |
比速度 [m・kW] | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
流入 | 流出 | 落差[m] | 水量 | 落差変化 | 水量変化 | 範囲 | 限界値式 | ||
ペルトン | 半径方向 | 垂直方向 | 250以上 | 小 | 小 | 小 | 150~200 | 12~23 | ![]() |
フランシス | 半径方向 | 軸方向 | 50~600 | 中 | 大 | 大 | 160~220 | 60~300 | ![]() |
斜流 | 斜め方向 | 軸方向 | 40~200 | 大 | 小 | 小 | 180~230 | 120~350 | ![]() |
プロペラ | 軸方向 | 軸方向 | 5~80 | 大 | 大 | 大 | 200~250 | 250~850 | ![]() |
カプラン | 小 | 小 |

[編集] 衝動水車
衝動水車(しょうどうすいしゃ)は、圧力水頭を速度水頭に変えて水車に作用させるものである。衝動水車には以下のようなものがある。
- ペルトン水車
- ノズルからのジェット水流をランナ周囲のバケットに当てて回転させる水車。大型のものはノズル数を多くした縦軸であり、ノズル数の少ない小型のものには横軸のものがある。使用ノズルの数を変えることにより部分負荷でも効率が良い。
- デフレクタ(そらせ板)により水流の向きを変えて負荷遮断時急停止できるので、水圧管の圧力上昇を抑えることができる。高落差に向く。
- クロスフロー水車
- ガイドベーンにより調節された流水が、横軸の円筒型のランナの上部から中心へ流れ込み、下部で中心から外部へ流れ落ちる構造である。流水が羽根に二回作用するため比較的効率が良い。
- 最高効率点での効率は他に比して劣るものの、水量変化による効率の変化は少なく、小規模の変流量地点に適する。
- ターゴインパルス水車
- ペルトン水車同様、ノズルからのジェット水流が持つ運動エネルギーを全て速度エネルギーの形で利用するが、ランナーの片面からあてて回転させるところが違う。
- 比速度はペルトン水車の2倍なので、等しい出力を得るために必要とされるランナ直径はペルトン水車の半分で済む。
- ペルトン水車よりも使用水量を多く取れ、フランシス水車に必要な密閉構造が不要である。
- 有効落差は、ペルトン水車とフランシス水車の両方が重なったところである。
[編集] 反動水車
反動水車(はんどうすいしゃ)は、圧力水頭を水車に作用させる水車である。反動水車には以下のようなものがある。
- フランシス水車
- ケーシングからガイドベーンを通った流水が、渦巻き型ランナの外周部に半径方向から流入し軸方向に流出する水車。構造が簡単で保守が容易である。
- 流量変化による効率の低下が大きい。
- 斜流水車
- 渦巻きケーシングからガイドベーンを通った流水が、渦巻き型ランナの外周部に軸に対し斜め方向から流入し軸方向に流出する。
- 落差や水量の変化によってランナ羽根の角度を変え、効率の良い運転が可能なデリア水車が一般に用いられている。
- プロペラ水車
- 軸方向から流入した流水が、軸方向に流出する。
- 落差や水量の変化によってランナ羽根の角度を変えるものをカプラン水車という。
- 円筒水車(チューブラ水車)は、水中の円筒ケーシング内に発電機などを収め、その後部にガイドベーンやランナを設置したもので、水流の曲がりによる抵抗が少なく効率が良い。