能格動詞
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能格動詞(のうかくどうし)とは、自動詞・他動詞いずれとしても用いられる動詞で、他動詞として用いた場合の目的語と、自動詞として用いた場合の主語とが同じであるようなものをいう。
英語の例としては open がある。他動詞としては
John opened the door.(ジョンはドアを開いた)
自動詞としては
The door opened.(ドアが開いた)
となる。これでわかるように、日本語の「開く」も能格動詞である。
英語では次のような動詞がある:
- 状態変化を示す – break, burst, melt, tear
- 料理に関する – bake, boil, cook, fry
- 移動を示す – move, shake, sweep, turn
- 乗り物に関する – drive, fly, reverse, sail
ふつう動作主は人、被動者はモノである。自動詞としての能格動詞は、文における動作主の重要性を弱めて(受動態のように動作主を by で示すことはできない)、被動者を主語にし、あたかもモノが自発的に変化したかのようにいう言い方に用いられる。
日本語では次のような変化を表す動詞がある:
- 基礎的な動詞:「開く」(「ドアを開く」「ドアが開く」の両用法がある)、「閉じる」、「終わる」などがあるが、比較的少ない。
- 漢語に由来するサ変動詞:「閉鎖する」(「工場を閉鎖する」「工場が閉鎖する」)、「生成する」、「発生する」、「連続する」、「停止する」などの変化を示す動詞。
日本語では能格動詞が多くない代わりに、「建てる」と「建つ」のような、他動詞と自動詞が対をなす動詞(有対動詞)が数多くあるので、これらを利用して「誰かが家を建てる」を「家が建つ」のような自発表現に言い換える方法(脱使役化)がよく用いられる。
「能格動詞」という名は、「能格性」、すなわち他動詞として用いた場合の目的語と自動詞として用いた場合の主語とが同じであるような性質をもつ動詞という意味である。
ロマンス語では他動詞を再帰動詞にして自動詞的に用いることが多く、このような再帰動詞を能格動詞と呼ぶ場合もある。
[編集] 他の意味
動詞によって表される行為が、動詞の目的語よりも主語に影響を与えるような動詞(つまり被動者が主語である)を指して、能格動詞ということもある。これは非対格動詞に等しい。
最初に述べた意味の能格動詞における自動詞用法も、この非対格動詞に含まれる。
なお、think、see、understand、experience、eat などの動詞は
- I ate. (食事する)
- I ate a hamburger. (ハンバーガーを食べる)
というふうに自動詞・他動詞両方に用いられる(自他動詞 Ambitransitive verb)が、これらは他動詞の目的語を省略して自動詞化しただけであって、ふつう能格動詞とは呼ばない。ただし
- This eats crisp. (これは食べるとパリパリする)
という言い方(食べ物が主語になる)はある。しかしこれはその食べ物の性質を述べるもので、能格動詞のような変化を述べるものではない。この言い方は能動態と受動態の中間的なものという意味で中間構文(Middle construction)と呼ばれる。