舞台監督
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舞台監督(ぶたいかんとく)は、舞台上で行われるコンサート・イベント・演劇などで、演出家(もしくはそれに相当するクリエイター)の意向を汲み、その伝えたいイメージを具現化するスタッフの調整・指揮・進行管理をする責任者である。作業的な役割は後述するが、おおまかに言えば「段取り屋」と「総雑用係」である。
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[編集] 実務
舞台監督の仕事は多岐に渡っており、この限りではなく、また、全て舞台監督が抱えなければいけないわけでもない。
その内容、所属する集団や開催する場所、力量、公演規模などにより各役割を他のセクションが担当する場合も多々ある。一般的に規模が大きくなればなるほど舞台監督の役割を担うセクションの多人数化・分担化がなされ、規模が小さくなると専任ですらなくなる事が多い。
[編集] 事前準備
舞台監督の仕事の大半を占めるのが事前準備であると言っても過言ではない。
演出プランを聞き、脚本・構成を吟味。各セクションと打ち合わせをし、必要な事項をリストアップする。
[編集] 情報の入手
常設の施設を使用する場合、仕込み用の図面・電源や舞台機構操作盤の位置・実際に操作する時の制限・搬入口の位置や条件・備品など、必要な情報を入手・手配する。 場面転換や幕などの吊り物の位置関係を知るために重要なものであり、他セクションからの質問などにも答えていけるようにする。
仮設の場合、製作側が基本的な情報を既に抑えている場合が多いが、初めて開催するような場所の場合、周辺環境も含め特に情報収集が重要となる。
[編集] 進行管理
全体スケジュールを立案、調整する。 美術プラン・照明プランなどで、調整が必要な場合は調整。 演出プランの変更や製作進捗が悪い場合など、大きく変化する場合にそれに伴うセクション間の調整をする。
[編集] 届け・申請
常設施設の場合、施設管理者に対し公演概要や仕込み図を作成し提出。
仮設施設や公道・公演などの屋外(劇場等以外の建築物その他の工作物)での企画は催物の開催届けが必要になるので、管轄地域の自治体に確認が必要である。
また搬入量が多く、トラックが長時間道路交通を遮断するような場合には、管轄警察署に道路使用許可申請を提出しなければならない。
舞台上で火を使う場合、ホール管理者の了解を得るだけでなく、管轄消防署に火気使用の緩和申請を提出しなければならない。使用する火気の規模は関係なく、マッチ1本、タバコ1本から提出する必要がある。スモークマシンは、装置の構造と利用施設の状態によって火気使用の緩和申請が必要な場合とそうでない場合がある。演出の都合上、公演中に誘導灯を消灯する時にも、誘導灯消灯計画書や警備要員編成表など様々な書類を用意・提出しなければならない。
[編集] 発注
舞台美術などで、購入しなければいけないものの購入手段の検討。 消え物などの調達・保管方法も考え、手配する。
[編集] 資料の作成
責任範囲が広く、それぞれの物事がお互いに影響しあう為にありとあらゆる物事を把握しなければならない。そのため、前述の仕込み図だけでなく、道具帳・転換表・搬入物の輸送手段一覧など、様々な資料を用意するもしくは依頼する。
[編集] 設営(仕込み)
事前に設営のタイムスケジュールを立て、そのスケジュールに合うような輸送・搬入計画を立てる。 予期しないことが発生したりスケジュール通りにいかなかったりする時に、各セクションの利害調整を図り、順番と時間配分を決定する役割も持つ。
[編集] 公演期間中
この段階では、作品クオリティの維持は演出家から舞台監督に委ねられる。それに加え現場責任者としての責任を負いながら、機構操作などの役割も担っていく。
[編集] 本番前
本番前には、飲食物や消耗品などの消え物の準備や、舞台機構の作動などの確認を行う。また、他のセクションで行われた確認作業の結果と合わせ、舞台の技術的条件・保安要件などが確保されたことを確認した上で、ホール内に観客の誘導を許可する「客入れ」指示を出す。開始5分前と本番開始を知らせるベルの吹鳴の指示も出す。
本番前にトラブルが発生した場合、該当範囲の復旧に要する時間や仮の変更で対応できるか状況を判断し、時間を遅らせたり内容の変更や中止等の判断を下す。
[編集] 本番中
緞帳やバトンなどの機構や花火・スモーク、舞台進行上必要な転換、各セクション・役者へのキッカケ出しを行う。 進行と安全の最終的な責任を持ち、突発的な様々なトラブルに対応する。 また、重大な障害が発生した・発生が予見できる・安全の確保が出来ない等の場合に中止する(もしくは進言する)権限を持つ。
[編集] 本番終了後
撤収を円滑に進める為の指示を出し、原状復帰して引き渡せる状態にする。継続的な公演を行っている場合は次の公演に向けた準備・確認等を行う。