見せ板
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見せ板(みせいた)とは、約定する意図がない「指値注文」のこと。見せ玉(みせぎょく)とも言う。
[編集] 概要
例えば、ある価格帯で株を売り抜けたいとき、目標価格のやや下値に大量の買い注文を出し(見せ板)、他の投資家がそれより高い価格で買い注文を出すことを誘い、それに売り注文をぶつけ、売り抜けたと同時に大量の買い注文をキャンセルする方法である。
これは証券取引法違反であり、逮捕者もいるが、実際の相場ではしばしば見受けられる行為である。約定の意思をもち大量の指し値注文を出すことで、結果として相場に買い圧力、売り圧力がかかること自体は違法ではない。しかし圧力を相場を変動させる目的に利用することは違法であり(証取法159条2項1号)、また相場をくぎ付けし、固定し、又は安定させる目的で大量の注文を入れることも違法行為である(同159第3項)。
見せ板の要件は「約定の意思がないこと」であり、目的達成と同時に見せ板をキャンセルしていることが重要なポイントである。そこで見せ板を、他の投資家に反対売買で約定されてもかまわないと考えて取引しているのか、約定の意思なく偽装しているかの認定が問題となる。このため、資金力の大きな仕手ほど、見せ板の摘発は困難である。
また現行法文では、これらの行為の「委託等若しくは受託等」を禁止しているにとどまるため、証券会社のいわゆる自己売買部門による同行為が、事実上野放しになっているとの指摘がある。証取法42条9項では、証券会社による相場操縦を禁止しているが、法文では「買付け若しくは売付け」による相場操縦を禁止しているのみであり、売買を伴わない「見せ板」行為は、罰則をともなう規制から洩れる格好となっている。
ある程度の出来高がある株においては、少なからず「見せ板が含まれている」と見るべきである。
[編集] 主な事件
2004年11月30日、証券取引等監視委員会が、真柄建設(株)など複数銘柄に対して見せ板をおこなった北海道釧路市の会社員を、証券取引法違反(相場操縦)の疑いで釧路地検に告発した。
これはネット取引による株価操縦で、初めての摘発。2005年12月9日に、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金100万円の有罪判決が下された。
[編集] 条文
- 証券取引法第159条第2項第1号
- 証券取引法第159条第3項
- (罰則)証券取引法第197条第7項:五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金、又はこれを併科する。
- ※なお、相場操縦に対する課徴金について規定する同174条は、売買等が成立している取引のみを規制の対象としており、「見せ板」行為は売買等が成立していないことから、課徴金制度の適用対象外となっている。