訴えの併合
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訴えの併合(うったえのへいごう)とは、民事訴訟において複数の請求が結合されていることをいう。訴えの客観的併合と訴えの主観的併合とを含む。複雑訴訟形態の一つである。
[編集] 訴えの主観的併合
訴えの主観的併合とは、複数の原告が1つの訴えを提起する場合、または、複数の被告に対し1つの訴えを提起する場合をいう。訴訟の当事者、すなわち「主体」が、原則的な訴訟形態である1対1とは異なって、一方または双方が複数人となる状態を指して「主観的」な併合と呼ぶ。多数当事者訴訟の一形態である。
併合の仕方によって、以下の三種類に分類される。
- 訴えの主観的単純併合
- 数人による請求、または数人に対する請求が論理的に両立しうる場合に、そのすべての請求について判断を求める場合。
- 訴えの主観的選択的併合
- 数人による請求、または数人に対する請求が論理的に両立しうる場合に、一つの請求が容認されることを解除条件として、他の請求を併合する場合。
- 訴えの主観的予備的併合
- 数人による請求、または数人に対する請求が論理的に両立し合えない関係にある場合に、原告がその一つの認容を優先して申立て(第一次請求ないし主位請求)、それが認められることを解除条件として、次順位の請求(第二次請求ないし副位請求)を併合する場合。
- この併合形態については、後順位の請求の被告は全く審理や判断をしてもらえない可能性があり、非常に不安定な立場におかれるという不利益を負うことから、認められるかについて争いがある。しかし、現行民事訴訟法が共同訴訟における同時審判の申立てを認めており、訴えの主観的予備的併合にかわる機能を果たしていることから、実質的には問題とならなくなっている。
また、訴訟係属中に主観的併合状態になることを、訴えの主観的追加的併合という。具体的には以下のものが追加的併合にあたる。
[編集] 訴えの客観的併合
訴えの客観的併合とは、同一原被告間における複数の請求が同一の訴訟手続で審判される場合をいう。訴訟の対象、すなわち「客体」が、原則的な訴訟形態が1個であるのに対して、複数個あわせた状態を指して「客観的」な併合と呼ぶ。複数請求訴訟の典型的な例である。
併合の仕方によって、以下の三種類に分類される。
- 訴えの客観的単純併合
- 両立しうる複数の請求を単純に併合し、すべての請求について判決を求める場合。
- 訴えの客観的選択的併合
- 同一の目的を有し両立しうる複数の請求を一つの請求が容認されることを解除条件として、他の請求を併合する場合。わかりやすくいうと、複数の請求のうち、どれでもいいからどれか一つを認めて欲しいという訴えのこと。選択的併合は、新訴訟物理論においては一つの訴訟物であり、各主張は攻撃防御方法の一つと考えられる場合であるため、旧訴訟物理論を採用する場合にのみ問題となる。
- 訴えの客観的予備的併合