量子重力理論
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量子重力理論(りょうしじゅうりょくりろん)とは、重力相互作用を量子化した理論である。ただし、現時点では、未完成である。
相対性理論を摂動により単純に量子化すると二次のレベルで紫外発散が起きる。ただし相対性理論自体はゲージ理論で考えることができるため(内山)、これは単に摂動による量子化の仕方が悪いといえる。この重力ゲージ理論によれば重力子はスピン2のボソンであると考えられている。そこで次に考え出されたものが超重力理論である。これは重力子がスピン3/2のグラビティーノを超対称性パートナーとして持つ、という理論である。しかしこの理論も高次のレベルで発散している可能性が指摘されている。そこで次に考え出された理論が超弦理論である。これは重力子が閉じたひもで記述される、という理論である。ほかにもこの理論は開いたひもとして光子、ウィークボソン、グルーオンなどのゲージボソン、そしてフェルミオンを含むので究極の理論と呼ばれることがある。またこの方法とは異なる角度としてループ量子重力理論がある。ループ量子重力はその背後にペンローズのツイスター理論とスピンネットワークを含んでおり、この理論は超弦理論のみが量子重力の唯一の理論ではないことを物語っている。
重力を量子化するためのよい現象としてブラックホールが挙げられる。ブラックホールの内部では相対性理論が破綻をきたすと考えられており、そこでは時空を量子化した理論が有効である。この方向による最近の発展ではホログラフィック原理が挙げられる。これはブラックホールの内部の情報量の保存限界はその体積ではなく表面積に依存するというものである。これはひも理論のメンブレインに通じるものがある。またAdS/CFT対応としてある種の物理が多様体の境界に還元できるという考え方もある。
いずれにしても量子重力を考える上で最大の問題点はその指針とすべき基本的な原理がよく分かっていないということである。そもそも重力は自然界に存在する四つの力の中で最も弱く、量子化された重力が関係していると考えられる現象が現在到達できるレベルでは観測されていないのである。